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第36回 お客様お悩み相談

技人国でエンジニアとして採用したが、最初の半年は現場研修させたい。違法になる?

 

「新卒の外国人エンジニアを採用しました。製品や製造工程を理解してもらうため、最初の半年〜1年間は工場のラインに入って現場研修をさせたいと考えています。技人国で現場作業をさせると入管法違反になりますか?」という企業様からのご相談です。

 

先に結論

日本人大卒新入社員と同様のキャリア形成の一環として行われる現場研修であれば、直ちに違法となるわけではありません。ただし、その研修が「将来の専門的・技術的業務に必要な実務経験であること」「期間が明確に限定されていること」「研修計画が合理的に策定されていること」が条件です。実態として現場作業員としての穴埋めになっている場合は、不法就労と判断されるリスクがあります。

 

1.制度上の整理

● 技術・人文知識・国際業務では、原則として自然科学・人文科学の知識や国際的知見を必要とする業務に従事することが求められます。工場での単純作業や店舗での接客作業そのものは本来の活動範囲外です。

● 出入国在留管理庁のガイドラインや実務運用では、新卒等の一括採用において、日本人の正社員と同様の計画的な研修プログラム(OJTを含む)の一環として現場研修を行うこと自体は、一定の範囲で認められています。

● 研修期間は、業務内容や会社規模にもよりますが、通常数か月から最長でも1年程度が一般的な目安とされます。複数年にわたる長期の現場研修や、いつ終了するか定めのない現場配置は、技人国の趣旨を逸脱しているとみなされます。

● 外国人社員のみに現場研修を課したり、研修終了後も現場作業を継続させたりすることは認められません。

 

2.このケースで確認したいポイント

● 日本人の同種採用者と同じ研修カリキュラム・期間になっているか

● 研修の目的(現場を知ることが将来のエンジニア業務にどう活きるか)が明確か

● 研修計画書(月別・週別のスケジュールと到達目標)が作成されているか

● 研修終了後に本来の専門業務(設計・開発等)へ移行することが確定しているか

● 研修中も日本人と同等以上の適正な報酬が支払われているか

ここで重要なのは、項目を一つずつ切り離して考えないことです。申請書、届出、契約書、課税・社会保険資料、会社資料などに同じ事実が異なる形で現れます。日付・会社名・職務・収入・家族関係を時系列でそろえ、資料相互に矛盾がない状態を作ることが、追加資料対応や不許可リスクを減らす基本になります。

 

3.準備しておきたい資料

● 新入社員研修計画書・カリキュラム表

● 職務内容説明書(研修時と研修終了後の業務を分けて記載)

● 雇用契約書・労働条件通知書

● 日本人同期社員の育成計画や過去の研修実績資料

上記は典型的な確認資料であり、すべてのケースで同じ資料が法定必須という意味ではありません。出入国在留管理庁の公式提出書類を基礎にしつつ、個別事情を説明するために必要な補足資料を選びます。外国語資料には、審査上意味を持つ氏名・日付・金額・身分関係等を正確に反映した日本語訳を付けます。

 

4.行政書士として考える実務上の進め方

● 採用段階で研修の全期間と目的を社内文書として明確化する

● 申請時に「採用理由書」と併せて「研修計画書」を提出し、現場研修の合理性を説明する

● 研修期間中の定期的な面談や報告書を作成・保存しておく

● 研修終了後は速やかに本来の専門業務へ配置転換する

申請を急ぐほど、先に結論を決めて資料を後付けしたくなりますが、順序は逆です。まず事実を確認し、現在の法令・公式運用に当てはめ、足りない資料と説明が必要な点を整理してから申請方針を決めます。特に在留期限や14日以内の届出期限がある場合は、期限管理と実体審査の準備を並行して進めます。

 

5.よくある誤解

「研修という名目さえつければ、1〜2年間現場作業をさせても問題ない」「採用理由書には開発業務と書いておき、実際は現場で働かせてもバレない」という考え方は非常に危険です。更新審査や立入検査等で実態が発覚した場合、虚偽申請や不法就労助長罪に問われる可能性があります。

 

入管手続では、似た状況でも現在の在留資格、申請区分、経歴、会社・家族の状況によって結論が変わります。インターネット上の過去事例をそのまま自分のケースに当てはめず、申請時点の制度と事実関係で確認することが大切です。

 

よくある質問

Q1 中途採用の外国人でも現場研修をさせられますか?

A 中途採用(即戦力採用)の場合、新卒のような長期現場研修の合理性を説明するのは難易度が上がります。数週間〜1か月程度の基礎把握研修にとどめるのが無難です。

Q2 研修計画書は入管への申請時に必ず提出が必要ですか?

A 必須書類一覧に明記されていなくても、現場研修を行う予定がある場合は、職務内容の疑義を避けるため申請時に自主提出することが強く推奨されます。

Q3 研修期間中に在留期間更新の時期が来たらどうなりますか?

A 現在研修中であること、計画通りに終了して専門業務へ移行する見込みであることを、進捗報告書等を添えて説明する必要があります。

 

行政書士へ相談した方がよいケース

● 在留期限・届出期限が近く、手続の優先順位が分からない

● 公式の提出書類一覧だけでは、自分の事情をどう説明すべきか判断しにくい

● 転職、失業、家族変更、会社の経営状況など申請後・前回許可後に事情が変わっている

● 過去の届出、税金、年金、社会保険、在留状況に気になる点がある

● 不許可を避けるため、申請前に事実と立証資料の整合性を確認したい

行政書士鈴木茂事務所では、単に書類をそろえるだけでなく、現在の在留資格、これまでの経緯、申請後の生活・就労計画を確認し、どの事実をどの資料で説明するかを整理します。許可を保証することはできませんが、申請前に論点を明確にし、入管に伝わりやすい形へ整えることができます。

 

主な公的情報源

● 出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html

● 出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務の在留資格の明確化等について」 https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri07_00089.html

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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