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第47回 お客様お悩み相談

永住申請で「独立生計要件」を満たさない?産休・育休中の考え方

 

よくあるご相談

「もうすぐ永住申請の年数要件を満たすのですが、現在育児休業中で無給(または育児休業給付金のみ)です。過去数年間は十分な年収がありましたましたが、今の年収が低いと『独立生計要件』を満たさず不許可になりますか?」というご相談です。

 

先に結論

産休・育休による一時的な収入の減少があることだけで、直ちに独立生計要件を満たさないとして不許可になるわけではありません。永住審査における独立生計要件は、申請者単独ではなく「世帯単位」で安定した生活が営めるかを総合的に判断します。配偶者に十分な収入がある場合や、預貯金等の資産がある場合、また復職後の収入見込みを合理的に説明できれば、永住許可される可能性は十分にあります。

 

1.制度上の整理

● 永住許可の法的要件である「独立の生計を営むに足りる資産又は技能を有すること」は、日常生活において公共の負担にならず、将来においても安定した生活が見込まれることを求めるものです。

● この要件は「世帯単位」で判断されるため、本人が育休中で収入が減少していても、同居する配偶者の収入で世帯全体の生活基盤が維持できていれば要件を満たすと解されます。

● 育児休業給付金は課税対象とならないため、住民税の課税証明書上の「所得」は低く(またはゼロに)表記されます。そのため、数字だけを見ると要件を満たしていないように誤解されるリスクがあります。

● 育休は法的に認められた労働者の権利であり、雇用関係が継続していることを前提としています。復職予定であることを在職証明書等で示すことが重要です。

 

2.このケースで確認したいポイント

● 配偶者(夫・妻)の年収はいくらか、世帯としての生活費は賄えているか

● 本人の現在のステータスが「退職」ではなく「休業中」であり、復職の意思と予定があるか

● 休業中の育児休業給付金等の受給状況や、生活を支える十分な預貯金があるか

● 産休・育休前までの数年間は安定した収入と納税の実績があったか

● 保育園の入所予定など、復職に向けた具体的な準備が進んでいるか

ここで重要なのは、項目を一つずつ切り離して考えないことです。申請書、届出、契約書、課税・社会保険資料、会社資料などに同じ事実が異なる形で現れます。日付・会社名・職務・収入・家族関係を時系列でそろえ、資料相互に矛盾がない状態を作ることが、追加資料対応や不許可リスクを減らす基本になります。

 

3.準備しておきたい資料

● 会社発行の在職証明書(休業中である旨と、復職予定日が記載されているもの)

● 配偶者の直近の課税証明書・納税証明書および在職証明書

● 育児休業給付金の受給資格確認通知書や振込通知書

● 世帯の預貯金残高証明書や通帳のコピー

● 産休・育休前の本人の課税証明書(過去の実績を示すため)

上記は典型的な確認資料であり、すべてのケースで同じ資料が法定必須という意味ではありません。出入国在留管理庁の公式提出書類を基礎にしつつ、個別事情を説明するために必要な補足資料を選びます。外国語資料には、審査上意味を持つ氏名・日付・金額・身分関係等を正確に反映した日本語訳を付けます。

 

4.行政書士として考える実務上の進め方

● 課税証明書の数字が一時的に下がっている「正当な理由(産休・育休)」を理由書で明記する

● 世帯全体の収支状況(配偶者の収入や給付金)を整理し、公共の負担になっていないことを立証する

● 復職後の予定年収やキャリアプランを示し、将来の安定性をアピールする

● 場合によっては、復職し数か月間の給与明細が出揃ってから申請するよう時期の調整を提案する

申請を急ぐほど、先に結論を決めて資料を後付けしたくなりますが、順序は逆です。まず事実を確認し、現在の法令・公式運用に当てはめ、足りない資料と説明が必要な点を整理してから申請方針を決めます。特に在留期限や14日以内の届出期限がある場合は、期限管理と実体審査の準備を並行して進めます。

 

5.よくある誤解

「自分の課税証明書がゼロなら永住は絶対に無理だ」と諦めたり、逆に「育休中だから働いていないのは当然、何の説明もいらない」と数字だけを出して不許可になったりするケースがあります。入管には「なぜこの数字なのか」「今後の生活はどうなるのか」をこちらから積極的に説明する責任があります。

 

入管手続では、似た状況でも現在の在留資格、申請区分、経歴、会社・家族の状況によって結論が変わります。インターネット上の過去事例をそのまま自分のケースに当てはめず、申請時点の制度と事実関係で確認することが大切です。

 

よくある質問

Q1 シングルマザーで育休中の場合はどうなりますか?

A 配偶者の収入でカバーできないため、十分な預貯金(資産)があること、育児休業給付金で生活が成り立つこと、復職までの具体的な見通しを示すなど、より緻密な生計証明が求められます。

Q2 育休明けに時短勤務で復帰する予定ですが、年収要件は下がりますか?

A 時短勤務による年収低下も世帯単位で評価されます。世帯全体で安定した生活ができている限り、時短勤務であること自体が直ちに不許可の理由にはなりません。

Q3 復職してから申請した方が安全ですか?

A はい。もし在留期限に余裕があるならば、復職して給与支給が再開し、生活リズムが安定してから申請した方が、将来の安定性の立証は容易になります。

 

行政書士へ相談した方がよいケース

● 在留期限・届出期限が近く、手続の優先順位が分からない

● 公式の提出書類一覧だけでは、自分の事情をどう説明すべきか判断しにくい

● 転職、失業、家族変更、会社の経営状況など申請後・前回許可後に事情が変わっている

● 過去の届出、税金、年金、社会保険、在留状況に気になる点がある

● 不許可を避けるため、申請前に事実と立証資料の整合性を確認したい

行政書士鈴木茂事務所では、単に書類をそろえるだけでなく、現在の在留資格、これまでの経緯、申請後の生活・就労計画を確認し、どの事実をどの資料で説明するかを整理します。許可を保証することはできませんが、申請前に論点を明確にし、入管に伝わりやすい形へ整えることができます。

 

主な公的情報源

● 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html

● 出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/eizyuu_00001.html

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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