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第44回 お客様お悩み相談
外国人配偶者に過去のオーバーステイ(不法滞在)歴がある。配偶者ビザは取れる?
 
 
よくあるご相談
「結婚を考えている外国人の恋人が、過去に日本でオーバーステイをして強制送還されたことがあると打ち明けてきました。結婚すれば配偶者ビザで日本に呼ぶことはできますか?」というご相談です。
 
先に結論
過去にオーバーステイ等で退去強制(強制送還)や出国命令を受けた外国人は、一定期間(1年、5年、10年など)日本へ入国できない「上陸拒否期間」に該当します。この期間中は原則として配偶者ビザ(COE)は許可されません。しかし、日本人と真正な結婚をしており、人道上特別な配慮が必要な事情がある場合は、上陸特別許可等の例外的な措置により入国が認められる「可能性」はあります。真摯な反省と婚姻の実体の立証が極めて重要です。
 
1.制度上の整理
● 入管法上、オーバーステイで摘発され退去強制された場合は原則5年(過去に違反歴がある場合等は10年)、自ら出頭して出国命令制度を利用して帰国した場合は1年の上陸拒否期間が設定されます。
● 上陸拒否期間中に日本人の配偶者としてCOEを申請しても、入管法の上陸拒否事由に抵触するため、原則は不交付となります。
● しかし、法務大臣の裁量による「上陸特別許可」が得られれば、拒否期間中であっても入国が認められる場合があります。
● 現在オーバーステイのまま日本に滞在している外国人と結婚する場合は、自ら入管に出頭して「在留特別許可」を求める手続き(違反審査)を経る必要があります。この場合も、婚姻の真実性と違反に至った経緯が厳格に審査されます。
 
2.このケースで確認したいポイント
● 過去の違反が「退去強制」か「出国命令」か(上陸拒否期間は何年か)
● 帰国してから現在まで何年経過しているか
● 違反の内容(単純なオーバーステイか、偽造パスポート使用や犯罪を伴うか)
● 結婚に至る交際経緯が真実であり、証拠(写真、渡航歴、連絡履歴)が十分か
● 日本で生活するための経済的基盤(日本人配偶者の収入等)が安定しているか
ここで重要なのは、項目を一つずつ切り離して考えないことです。申請書、届出、契約書、課税・社会保険資料、会社資料などに同じ事実が異なる形で現れます。日付・会社名・職務・収入・家族関係を時系列でそろえ、資料相互に矛盾がない状態を作ることが、追加資料対応や不許可リスクを減らす基本になります。
 
3.準備しておきたい資料
● 出会いから現在までの詳細な交際経緯説明書と裏付け資料(写真、LINE等)
● 過去の違反に対する真摯な反省文・上申書(外国人本人および日本人配偶者作成)
● 日本人配偶者が相手の国へ渡航した際のパスポートのスタンプ、航空券の控え
● 日本人配偶者の経済的基盤を証明する資料(課税証明書、在職証明書等)
● 両家の親族が結婚を認知・賛成していることを示す資料(嘆願書等)
上記は典型的な確認資料であり、すべてのケースで同じ資料が法定必須という意味ではありません。出入国在留管理庁の公式提出書類を基礎にしつつ、個別事情を説明するために必要な補足資料を選びます。外国語資料には、審査上意味を持つ氏名・日付・金額・身分関係等を正確に反映した日本語訳を付けます。
 
4.行政書士として考える実務上の進め方
● 本人の過去の出入国歴やオーバーステイの事情を隠さず正確にヒアリングする
● 上陸拒否期間内であれば、申請のタイミングを熟考する(期間満了を待つか、特別許可に挑むか)
● 「ビザ目的の偽装結婚ではないか」という入管の強い疑いを払拭するため、通常の何倍もの交際証拠を集める
● 反省の意と、日本社会に迷惑をかけず安定して暮らしていく決意を上申書にまとめる
申請を急ぐほど、先に結論を決めて資料を後付けしたくなりますが、順序は逆です。まず事実を確認し、現在の法令・公式運用に当てはめ、足りない資料と説明が必要な点を整理してから申請方針を決めます。特に在留期限や14日以内の届出期限がある場合は、期限管理と実体審査の準備を並行して進めます。
 
5.よくある誤解
「日本人と結婚さえすれば、過去の犯罪やオーバーステイは帳消しになる」「特別許可は誰でももらえる」というのは大きな間違いです。入管法違反というマイナスを補って余りある「保護すべき婚姻の実体」が証明できなければ許可は下りません。
 
入管手続では、似た状況でも現在の在留資格、申請区分、経歴、会社・家族の状況によって結論が変わります。インターネット上の過去事例をそのまま自分のケースに当てはめず、申請時点の制度と事実関係で確認することが大切です。
 
よくある質問
Q1 上陸拒否期間の5年が過ぎれば、必ず配偶者ビザは出ますか?
A 必ずではありません。拒否期間が過ぎて上陸拒否事由から外れたとしても、「配偶者ビザ」自体の審査(婚姻の真実性、生計の安定など)をクリアする必要があります。
Q2 現在日本でオーバーステイ中の相手と結婚したいです。
A 婚姻届を提出し法的な夫婦となった後、入管に出頭して「在留特別許可」を求めることになります。この場合も専門家の助言のもと、慎重に準備を進める必要があります。
Q3 違反歴は隠して申請してもバレませんか?
A 入管には過去の出入国記録や指紋・顔写真データがすべて保管されています。隠蔽や虚偽申告が発覚した場合、ほぼ確実に不許可となり、以後の申請も絶望的になります。
 
行政書士へ相談した方がよいケース
● 在留期限・届出期限が近く、手続の優先順位が分からない
● 公式の提出書類一覧だけでは、自分の事情をどう説明すべきか判断しにくい
● 転職、失業、家族変更、会社の経営状況など申請後・前回許可後に事情が変わっている
● 過去の届出、税金、年金、社会保険、在留状況に気になる点がある
● 不許可を避けるため、申請前に事実と立証資料の整合性を確認したい
行政書士鈴木茂事務所では、単に書類をそろえるだけでなく、現在の在留資格、これまでの経緯、申請後の生活・就労計画を確認し、どの事実をどの資料で説明するかを整理します。許可を保証することはできませんが、申請前に論点を明確にし、入管に伝わりやすい形へ整えることができます。
 
主な公的情報源
● 出入国在留管理庁「在留特別許可された事例及び在留特別許可されなかった事例について」 https://www.moj.go.jp/isa/publications/materials/nyuukokukanri04_00034.html
● 出入国在留管理庁「在留資格『日本人の配偶者等』」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/spouseorchildofjapanese01.html

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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