在留期限が迫るのに会社が書類を出してくれない――本人が先にできる申請準備

在留資格(ビザ)の更新や変更の期限が間近に迫っているにもかかわらず、勤務先の企業から必要な書類(直近の決算書や法定調書合計表、会社側の理由書など)がなかなか発行されず、不安を感じているというご相談をいただくことが多くあります。

会社側の書類準備が遅れる理由は、担当者が手続に不慣れであること、社内決裁に時間を要していること、決算作業中であることなど、さまざまです。理由にかかわらず、在留期限の管理は本人にも直接影響するため、期限を待たずに会社へ状況を確認し、必要に応じて申請先へ相談することが重要です。

会社の書類がそろわない場合でも、在留期限前に本人が準備できる資料で申請・相談できる場合があります。本記事では、期限前に行う相談、先に提出できる資料、後日追完する際の説明方法を解説します。

 

1. 慎重な対応:書類がゼロでも「期限内の申請」を優先する

入管実務における重要な原則は、「どれだけ未完成の書類であっても、現在の在留期限の満了日までに、入管の窓口へ申請書を提出し、受付を受理してもらうこと」です。

必要書類がすべて揃わないまま在留期限が近づいた場合でも、自己判断で期限を過ぎるまで待たず、申請先へ相談してください。不足資料の補正を前提に受付が可能か、どの書類が最低限必要かは申請内容と窓口の判断によって異なります。申請書、本人資料、会社へ依頼した記録など、現時点で用意できる資料を整理して期限前に確認することが重要です。

 

2. 会社書類なしで入管の窓口で手続を進めるための「申立書」の作成

手ぶらで入管へ行き「会社が書類をくれません」と口頭で訴えるだけでは、窓口の担当者も申請を受け付けるべきか判断に困ってしまいます。そこで、実務上は「資料提出遅延に関する申立書(理由書)」を本人の名義で作成し、申請書と一緒に提出します。

書面には、以下の事実を誠実に、かつ客観的な証拠を添えて記載します。

これまでの請求の経緯: 「〇月〇日、および〇月〇日に、社内の総務部(担当者〇〇氏)に対して、更新に必要な決算書等の発行を文書で依頼した」という事実。

遅延している理由: 会社から言われている理由(例:「現在決算の確定作業中であるため」「社内決裁に時間を要しているため」など)をそのまま記載します。

会社へ必要書類を依頼したメールや社内チャットの記録は、本人が期限内の申請に向けて準備を進めていたことを示す資料になります。提出する場合は、日付、依頼内容、会社からの回答が分かる部分を整理してください。

 

3. 入管から会社への「直接の督促」という実務効果

この「申立書」付きの先行申請が受理されると、入管はしばらくの間審査を保留し、後日、本人宛てに「〇月〇日までに不足している会社側の資料を出してください」という「追加資料提出通知書」を発行します。

入管から追加資料の提出通知を受けた場合は、提出期限と求められている資料を会社の担当者へ速やかに共有してください。通知書を提示すると、会社側も手続の必要性を理解しやすくなります。期限内に揃わない場合は、申請先へ連絡し、提出できない理由や提出見込みを説明します。

 

よくある質問と実務回答

会社に何度もお願いしているのに、「決算書は会社の取扱いだから渡せない」と拒否されてしまいました。どうすればいいですか?

決算書等の社外秘資料については、会社から入管へ直接郵送する方法や、封緘した状態で提出する方法を案内される場合があります。申請先と会社の担当者に提出方法を確認し、本人が内容を閲覧しない形で提出できるか相談してください。

不足書類の提出期限(追加資料の期日)が来ましたが、それでも会社が書類を出してくれません。もう転職する必要がありますか?

会社から必要書類を受け取れず、在留期限が迫っている場合は、現在提出できる資料で申請できるか入管へ相談します。転職や就職活動のための在留資格を検討する場合も、退職時期、現在の在留資格、次の勤務先の見込み等によって取扱いが異なります。労務上の問題は労働局・弁護士等への相談も検討してください。

派遣会社から派遣されて働いていますが、派遣元と派遣先のどちらに書類を頼めばいいのか分からず、時間が過ぎてしまいました。

就労ビザの更新において、入管法上の「所属機関(雇用主)」は、あなたと直接の雇用契約を結んで給与を支払っている「派遣元(派遣会社)」です。したがって、決算書や法定調書合計表などの重要書類は、派遣先ではなく派遣元の本社に請求しなければなりません。派遣先の現場の責任者にいくら頼んでも書類は出てきませんので、ただちに派遣元の外国人雇用管理の専門窓口へ連絡を入れてください。

 

行政書士鈴木茂事務所からのメッセージ

個別事情に応じて必要資料と手続を確認し、必要に応じて専門家へご相談ください。

勤務先から必要書類の交付を受けられない場合でも、在留期限が迫っているときは、本人が準備できる資料を持参して早めに入管へ相談することが大切です。当事務所では、会社への書類依頼文、申請時点で提出できない資料の説明書、後日提出の方法などを、個別事情に応じて整理します。

 

公的リファレンス・参照一次情報:

o 出入国在留管理庁「在留資格更新許可申請の手続きおよび添付書類一覧」

o 労働基準法第22条(退職時等の証明・在職証明書の発行義務に関する条文)

o 入国審査要領(資料不足のまま受理された申請の補完取扱い基準)

 

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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