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海外出張が多い人の永住申請――年間出国日数だけでは分からない審査の裏側
「IT企業のグローバルコンサルタントとして働いており、海外の拠点への出張が非常に多いです。数えてみると、1年のうち合計で120日ほど日本を離れて海外にいました。日本には通算で8年間住んでおり、年収も高いのですが、やはり海外出張が多いと永住申請は不許可になってしまうのでしょうか?」
このような、第一線で活躍するビジネスパーソンや研究者の方々から、永住権の取得に関する切実なご相談をいただくことが増えています。
結論から申し上げますと、「年間の合計出国日数が一定の基準を超えている場合、機械的な審査の段階で『日本に継続して在留していない(在留の断絶)』とみなされ、不許可になるリスクが極めて高くなります。」
インターネット上では「年間100日以上、または連続して30日以上の出国があるとアウト」という、いわゆる『100日ルール』が有名ですが、審査の現場(審査要領)はそれほど単純な引き算だけで動いているわけではありません。審査官は、あなたが「なぜ海外に行っていたのか、生活の拠点はどこにあるのか」という『出国の質』を徹底的に精査します。海外出張が多い方が、審査の壁を乗り越えるための正しい実務対応を詳しく解説します。
1. 審査官の計算方法:在留資格の根幹を揺るがす「在留の断絶」
入管法第22条に基づく永住ガイドラインには、「引き続き10年以上日本に在留していること」という大原則があります。この「引き続き(継続性)」の定義について、入管の内部基準(審査要領)では、以下のような具体的な数字のデッドラインが存在します。
• 連続した出国: 1回の出国で「連続して90日(約3ヶ月)以上」日本を離れた場合。
• 通算の出国: 1年(過去の任意の365日間)の間で、細かな出国の合計が「通算して100日から120日以上」に達した場合。
これらの数字を超えてしまうと、審査官のシステム上、これまでの日本での在留年数(例:8年や9年貯めてきた実績)がその瞬間に「ゼロ(リセット)」にリセットされてしまいます。どれだけ過去に真面目に日本に住んで税金を納めていても、「現在のあなたの生活と就労の拠点は日本ではなく、海外にある」と法的にみなされてしまうのが、永住審査の厳しさです。
2. 実務上の最重要対策:「出張の正当性」を会社組織の資料で立証する
もし、あなたの年間出国日数が100日を超えていたとしても、それが「個人の身勝手な旅行やバカンス」ではなく、「日本の会社からの完全な業務命令(職務上の必要性)による海外出張である」ということが、客観的な書面で100%証明できれば、審査官の裁量によって「在留の継続性あり」と例外的に認めてもらえる救済の道が残されています。
そのためには、本人が「出張でした」と言葉で書くだけでは全く足りません。勤務先の企業(人事部など)に全面的な協力を依頼し、以下の強力なエビデンス一式を作成して提出する必要があります。
• 海外出張命令書(派遣内示書): 会社が発行した、出張の期間、渡航先の国名、そして「どのようなプロジェクトを遂行するための出張であったのか」という具体的な業務目的が明記された公的な社内文書。
• 出張復命書(レポートの控え)や成果物: 現地で行った会議の議事録や、出張の成果を示す報告書の写し(機密情報をマスキングしたもの)を添付し、ビジネスの実態があったことを示します。
3. 「日本への定着性」を示す補当資料の全投入
海外出張中であっても、あなたの生活の基盤が完全に日本に維持されていたことを証明するため、以下の資料を徹底的に集めて提出します。
• 経済の継続性: 海外にいる間も、日本の会社から日本の銀行口座へ毎月変わらず「日本円で給料」が支払われており、所得税や住民税、厚生年金が1円の遅れもなく給与天引きされ続けていることの証明。
• 住居の維持: 日本に自分名義の賃貸マンションや持ち家(マイホーム)があり、海外出張中も家賃を支払い続け、電気やガスの基本料金が引き落とされ続けている通帳のコピー。
• 家族の存在: 日本の自宅に、配偶者や子供が残って適法に暮らしており、生活の拠点が日本にあることの証明(家族の住民票など)。これらを示すことで、「体は一時的に海外にあったが、生活の根っこは1ミリも日本から動いていない」ということを論理的にアピールします。
よくある質問と実務回答
旅券(パスポート)を新しく更新したばかりで、古いパスポートにあった過去の海外出張の出入国スタンプが確認できません。入管には過去の出国日数はバレませんか?
100%すべて完全に把握されています。 日本の出入国在留管理庁の成田や羽田などの空港のゲートでは、外国人の中長期在留者が「自動化ゲート」や「顔認証ゲート」を通った際も、パスポートのスタンプの有無に関わらず、すべての出入国の日付がシステムに秒単位で記録されています。永住申請の際、審査官はそのシステムデータとあなたの申請書の記述を照合しますので、日数を意図的に少なく書いて誤魔化すような行為は「虚偽申告」となり、一発で不許可になります。日数が不安な場合は、事前に管轄の入管へ「出入国記録の開示請求」を行い、自分の正確な出国日数を把握してから申請書を作成してください。
コロナ禍の時期に、会社の指示で本国からのリモートワークを余儀なくされ、半年以上日本に戻って来られませんでした。この期間の出国もリセットの対象になりますか? 国境の封鎖やフライトのキャンセル、あるいは会社の感染症対策によるリモートワーク命令など、「本人に全く責任のない、やむを得ない不可抗力による長期出国」であった場合、その詳細な理由と会社の証明書(テレワーク命令書など)を提出することで、在留のリセットを免除し、継続在留として認めてもらえた実務の救済事例は多数あります。 ただし、単に「なんとなく本国の方が居心地が良かったから長居した」という個人的な理由は認められませんので、当時の客観的な社会情勢の証拠を添える必要があります。
現在、転職活動中ですが、次の新しい会社も海外出張が多いポジションです。永住申請をするなら、転職する前の今の会社にいるうちに出した方が良いですか? はい、間違いなく「現在の会社での出国日数がまだ少ない(または出張の理由書がスムーズにもらえる関係性が築けている)段階」で、永住申請を先に滑り込ませておくべきです。 転職をして新しい会社に入った直後に年間100日を超えるような海外出張が始まってしまうと、新会社との間での「出張命令の合理性」の立証が難しくなるばかりか、勤続年数の定着性(生計の安定)の面でもトリプルで厳しい審査を受けることになります。スケジュール管理が命です。
行政書士鈴木茂事務所からのメッセージ
世界を舞台に飛び回り、日本の経済やビジネスを支えている優秀な外国人の方々が、その「出張の多さ」という素晴らしい実績のせいで、永住審査においてまるで不審者のように疑われてしまうというのは、実務家として非常に歯がゆく、不条理に感じています。
しかし、入管の数式のルールが厳格である以上、私たちは感情論ではなく「完璧なロジックと圧倒的な証拠の書類」で審査官を納得させるしかありません。当事務所では、あなたの過去数年間のすべてのフライト記録を一覧表にし、1回1回の出国の正当性を会社の公式な職務証明とガッチリと噛み合わせた「特製の出向・出張説明理由書」を構築します。グローバルに活躍するあなたのキャリアと、日本での永住の夢を両立させるために、私の専門知識をぜひ役立ててください。
• 公的リファレンス・参照一次情報:
o 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(継続在留要件の解釈基準)」
o 在留審査要領(中長期在留者の出国に伴う在留期間の継続性・リセットに関する内部基準)
o 行政手続法第5条(審査基準の開示及び裁量権の行使に関する原則規定)
【この記事の執筆・監修者】
申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。
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