第9回 お客様お悩み相談

永住申請中に退職・解雇されました。申請はそのまま続けられますか?

 

よくあるご相談

「永住申請を出した後、会社都合で解雇されました。申請時には安定収入がありましたが、現在は求職中です。永住申請を取り下げるしかないでしょうか?」というご相談です。

 

先に結論

退職したから自動的に永住申請が不許可・取下げになるわけではありません。しかし、永住許可には独立生計や国益適合等の要件があり、申請時の勤務・収入状況から重要な変化が生じたことになります。現在の在留資格に応じた所属機関届出を行い、失業理由、求職状況、世帯収入・資産、再就職見込みを整理したうえで、審査官署への追加説明の要否を検討します。

 

1.制度上の整理

永住許可申請は、提出した時点だけで審査が固定される手続ではありません。審査中も現在の在留資格は有効に維持する必要があり、生活・勤務・家族・公的義務の履行状況に変化があれば、その変化が永住許可の要件や提出済み資料とどのように関係するかを確認する必要があります。

永住許可ガイドラインは、日常生活で公共の負担とならず、資産または技能等から将来において安定した生活が見込まれることを要件として掲げています。退職後の収入減少は、この将来安定性との関係で確認され得ます。

技人国等で契約機関との契約が終了した場合は、永住申請とは別に、所属(契約)機関に関する届出が必要です。永住審査中だから届出義務が免除されるわけではありません。

本人の責任によらない会社倒産・整理解雇と、無計画な無職期間では事情が異なります。事実、現在の生活費、求職活動、再就職予定を客観資料で説明できるようにします。

 

2.このケースで確認したいポイント

退職理由が自己都合か会社都合か、退職日を明確にする

本人・配偶者を含む世帯の現在収入と預貯金を確認する

現在の在留資格に必要な活動を維持するための求職状況

税・年金・健康保険を退職後も期限どおり処理する

再就職した場合は勤務先・年収・職務内容を永住申請時と比較する

ここで重要なのは、項目を一つずつ切り離して考えないことです。申請書、届出、契約書、課税・社会保険資料、会社資料などに同じ事実が異なる形で現れます。日付・会社名・職務・収入・家族関係を時系列でそろえ、資料相互に矛盾がない状態を作ることが、追加資料対応や不許可リスクを減らす基本になります。

 

3.準備しておきたい資料

退職証明書・解雇通知・倒産関係資料

雇用保険関係資料、求職活動記録

預貯金・世帯収入を示す資料

再就職した場合の雇用契約書・在職証明・給与条件

上記は典型的な確認資料であり、すべてのケースで同じ資料が法定必須という意味ではありません。出入国在留管理庁の公式提出書類を基礎にしつつ、個別事情を説明するために必要な補足資料を選びます。外国語資料には、審査上意味を持つ氏名・日付・金額・身分関係等を正確に反映した日本語訳を付けます。

 

4.行政書士として考える実務上の進め方

・所属機関届出と社会保険切替を先に適切に行う

・生活基盤と求職活動の資料を整理する

・永住申請の提出済み内容との差を確認する

・再就職の時期・条件も踏まえ、追加提出・取下げ・継続のどれが適切か個別判断する

申請を急ぐほど、先に結論を決めて資料を後付けしたくなりますが、順序は逆です。まず事実を確認し、現在の法令・公式運用に当てはめ、足りない資料と説明が必要な点を整理してから申請方針を決めます。特に在留期限や14日以内の届出期限がある場合は、期限管理と実体審査の準備を並行して進めます。

 

5.よくある誤解

「申請時に要件を満たしていたから、その後は何が起きても関係ない」という考え方は避けるべきです。審査中に重要な事情が変われば、現在の状態を前提に審査されることがあります。

入管手続では、似た状況でも現在の在留資格、申請区分、経歴、会社・家族の状況によって結論が変わります。インターネット上の過去事例をそのまま自分のケースに当てはめず、申請時点の制度と事実関係で確認することが大切です。

 

よくある質問

Q1 退職したら必ず永住申請を取り下げるべきですか?

A 必ずしもそうではありません。退職理由、無職期間、世帯収入、資産、再就職見込み等で評価が変わるため、事実を確認して判断します。

Q2 すぐ再就職できれば報告しなくてよいですか?

A 申請時の勤務先・年収等から重要な変更が生じています。届出義務は別途履行し、永住審査への追加説明の要否も検討してください。

Q3 失業給付は収入として見てもらえますか?

A 失業給付の存在だけで独立生計要件を満たすと断定はできません。給付期間、世帯全体の収入・資産、再就職見込み等を総合して整理します。

 

行政書士へ相談した方がよいケース

在留期限・届出期限が近く、手続の優先順位が分からない

公式の提出書類一覧だけでは、自分の事情をどう説明すべきか判断しにくい

転職、失業、家族変更、会社の経営状況など申請後・前回許可後に事情が変わっている

過去の届出、税金、年金、社会保険、在留状況に気になる点がある

不許可を避けるため、申請前に事実と立証資料の整合性を確認したい

行政書士鈴木茂事務所では、単に書類をそろえるだけでなく、現在の在留資格、これまでの経緯、申請後の生活・就労計画を確認し、どの事実をどの資料で説明するかを整理します。許可を保証することはできませんが、申請前に論点を明確にし、入管に伝わりやすい形へ整えることができます。

 

まとめ

退職したから自動的に永住申請が不許可・取下げになるわけではありません。しかし、永住許可には独立生計や国益適合等の要件があり、申請時の勤務・収入状況から重要な変化が生じたことになります。現在の在留資格に応じた所属機関届出を行い、失業理由、求職状況、世帯収入・資産、再就職見込みを整理したうえで、審査官署への追加説明の要否を検討します。

在留資格の手続は、制度を知るだけでなく、自分の事実関係を正確に当てはめる作業が必要です。少しでも判断に迷う事情がある場合は、期限直前ではなく、資料を集められる段階で相談することをおすすめします。

 

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主な公的情報源

・出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html

・出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/eizyuu_00001.html

・出入国在留管理庁「所属(契約)機関に関する届出」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/nyuukokukanri10_00015.html

※本記事は2026年8月26日時点で確認できる法令・出入国在留管理庁の公表情報を基に作成しています。制度改正、告示改正、運用変更等が行われることがありますので、実際の申請時には最新の公式情報をご確認ください。

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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