第1回

入国・在留審査要領とは?行政書士が読み解く「入管審査」の仕組みと実務

 

外国人の在留資格申請では、必要書類をそろえることが重要です。しかし、書類がそろっていれば必ず許可されるという仕組みではありません。入管では、在留資格該当性、上陸許可基準への適合性、入国後の在留状況、提出資料の客観性など、申請の種類に応じた複数の観点から審査が行われます。本記事では、行政書士として入管業務に携わる私が、出入国在留管理庁のホームページや公開・開示資料を確認しながら、「入国・在留審査要領」を手掛かりに入管審査の基本的な仕組みを2026年現在の法令・公表資料と照らして解説します。

 

「必要書類を出せば許可される」とは限らない

外国人の方が日本で働く、家族と暮らす、学ぶ、あるいは永住するためには、在留資格認定証明書交付申請、在留資格変更許可申請、在留期間更新許可申請、永住許可申請など、さまざまな手続を行うことになります。

ところが、実際の入管業務では、「必要書類は一通り出したのに追加資料を求められた」「前回は許可されたのに今回は審査が長い」「転職したところ、仕事内容について詳しい説明を求められた」「永住申請で過去の納税・年金・健康保険の資料を求められた」といった場面が少なくありません。

こうした疑問を理解するためには、出入国在留管理庁のホームページに掲載されている「提出書類一覧」だけではなく、入管法上どのような要件があり、申請人がその要件を満たしているかをどのような資料で確認するのか、という審査の考え方まで見ていく必要があります。

そこで本シリーズでは、行政書士として入管業務に携わる私が、出入国在留管理庁のホームページに掲載されている情報や、公開・開示されている「入国・在留審査要領」を自ら確認し、現行法令・最新公表資料と突き合わせながら読み解いていきます。資料を紹介するだけではなく、現在の申請実務でどのような意味を持つのかを丁寧に整理します。

 

入国・在留審査要領とは何か

「入国・在留審査要領」は、入国審査・在留審査等に関する取扱いを体系的に整理した資料です。公開・開示されている第3分冊の表紙には、第8編「審査体制」、第9編「入国事前審査」、第10編「在留審査」、第10編の2「在留資格の取消し等」、第11編「実態調査」、第12編「在留資格」が掲げられています(第3分冊・通し1頁)。

本シリーズでは、第8編から第11編について公開・開示されている第3分冊を確認するとともに、第12編「在留資格」については、令和8年(2026年)4月の開示文書として公開されている資料を併せて確認します。第12編には、全般事項のほか、高度専門職、経営・管理、技術・人文知識・国際業務、企業内転勤、介護、特定技能、永住者、日本人の配偶者等、永住者の配偶者等、定住者など、現在の主要な在留資格に関する項目が含まれています。

もっとも、ここで最も重要なのは、「審査要領そのものが入管法ではない」という点です。実際の許否判断の法的根拠は、入管法を中心として、施行規則、上陸許可基準省令、告示等にあります。たとえば在留資格認定証明書は入管法第7条の2、在留資格変更は第20条、在留期間更新は第21条、永住許可は第22条、在留資格の取消しは第22条の4に、それぞれ根拠規定があります。

したがって、「審査要領にこう書かれているから、現在も必ずこの取扱いになる」と短絡的に考えることはできません。本シリーズでは、審査要領の記載を出発点としつつ、現行法令と現在の公表運用を確認してから実務上の意味を説明します。

 

入管では「書類があるか」だけを見ているわけではない

公開・開示されている審査要領の第10編「在留審査」の冒頭には、在留審査を理解するうえで重要な考え方が示されています。そこでは、上陸審査が上陸時点での在留資格該当性や基準適合性を判断するのに対し、在留関係の審査では、それらがその後も維持されているかを見極めることに加えて、入国後の申請人の在留状況を評価する作業が必要であるという趣旨が記載されています。さらに、在留資格該当性・上陸許可基準適合性の維持を確認し、在留状況に関して情報を収集することも留意点として掲げられています(第3分冊・通し81頁)。

これは、更新申請や転職後の申請を考えるうえで非常に重要です。たとえば「技術・人文知識・国際業務」で在留する方であれば、単に「大学を卒業している」「雇用契約書がある」というだけでなく、現在の仕事内容が在留資格に該当しているか、申請時に説明した活動が実際に継続しているか、転職した場合には新しい勤務先・職務内容と学歴や職歴との関係に問題がないか、といった点も確認の対象となり得ます。

現在の実務が動いていることにも注意が必要です。出入国在留管理庁は、2026年4月15日に「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について一部改正し、翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に関する資料を新たに公表しました。また、同在留資格の公式ページは2026年7月13日にも更新され、派遣形態で就労する場合の取扱いに関する資料が掲載されています。つまり、審査要領だけではなく、申請時点での最新の公表運用を確認することが欠かせません。

 

申請案件は、すべて同じように処理されるわけではない

公開・開示されている審査要領の中で特に興味深いのが、第8編「審査体制」に記載された案件の振り分けです。資料上、申請案件を、許可・交付相当の案件、慎重な審査を要する案件、明らかに不許可相当の案件、資料の追完を要する案件という類型に振り分ける仕組みが示され、それぞれA案件、B案件、C案件、D案件という記載があります。

中でもD案件は、「現に提出されている申請書及び立証資料のみで許否の判断が困難な案件」とされています(第3分冊・通し9頁)。

ここから分かるのは、追加資料の要請があったからといって、それだけで「不許可になる」と決まったわけではないということです。少なくとも、この審査要領に示された分類では、現在提出されている資料だけでは判断できず、資料の追完が必要な案件という考え方が明確に存在します。

もちろん、追加資料の内容によっては重大な疑問点が生じている場合もあります。そのため、資料提出通知が届いたときは、「何を出せばよいか」だけではなく、「入管が申請のどの要件を確認しようとしているのか」を読み取ることが重要です。このA・B・C・D案件については、第3回で詳しく解説します。

 

「追加資料」が重要になる理由

第10編には、提出資料の性質を考えるうえで実務上とても参考になる記載があります。それが、「証する文書」と「明らかにする資料」の違いです。

審査要領では、「証する文書」について、第三者的立場で作成されるなど社会通念に照らして客観性を有すると認められる文書であり、必ずしも政府関係機関等の公的証明に限られないという趣旨が示されています。これに対して、「明らかにする資料」は、申請人等が自ら作成した資料や既存資料でも足りる場合がある点で異なるとされています(第3分冊・通し94頁)。

この違いは、説明書・理由書を作成するときにも重要です。申請人本人が事情を詳しく説明する文書は大切ですが、それだけで客観的な事実まで証明できるとは限りません。必要に応じて、在職証明書、雇用契約書、給与資料、会社の登記事項証明書、取引資料、学位・卒業証明書、納税証明書、社会保険関係資料などを組み合わせることで、説明内容を客観的資料から裏付ける必要があります。

逆に、すべての事情について公的な証明書が存在するわけでもありません。そのような場合には、何を客観資料で立証し、何を説明書等で補足するのかを整理することが、申請書類を組み立てるうえで重要になります。

 

「審査要領に書いてある=2026年現在もそのまま使える」ではない

公開・開示されている過去の版の第3分冊には、現在とは異なる在留資格名称や旧制度に基づく記載も含まれています。たとえば古い資料では「投資・経営」「技術」「人文知識・国際業務」が別々に記載されていますが、現在は「経営・管理」「技術・人文知識・国際業務」という在留資格になっており、その後に「高度専門職」「介護」「特定技能」などの在留資格も制度化されています。

そのため、古い審査要領に書かれた取扱いを、そのまま2026年の申請に適用することはできません。大切なのは、「当時どのような審査原則・考え方が示されていたのか」と「現在の法令・公表運用ではどうなっているのか」を分けて読むことです。

永住許可も同様です。出入国在留管理庁は2026年2月24日に「永住許可に関するガイドライン」を改訂しています。現在のガイドラインでは、素行、独立生計、日本国の利益に合することに加え、公的義務として納税、公的年金、公的医療保険の保険料、入管法上の届出義務等を適正に履行していることが示されています。また、2027年4月1日からの在留期間要件に関する取扱い変更についても経過措置が公表されています。

したがって、審査要領を実務で利用する場合には、「資料の年代」を必ず意識する必要があります。古い資料から現在も通用する審査の基本思想を読み取りつつ、現在の具体的要件については最新の法令・公式資料で確認する、という二段構えが安全です。

 

黒塗り・欠落・読めない部分を推測しない

公開・開示されている審査要領の中には、黒塗り部分や、スキャン状態等により文字を正確に読み取りにくい箇所もあります。

本シリーズでは、そのような箇所について「おそらくこういう内容だろう」と推測して補完することはしません。読めないものは読めないものとして扱い、他の公開資料で確認できる場合だけ、その別資料を根拠として説明します。

この姿勢は入管実務そのものにも通じます。第11編「実態調査」では、実態調査報告書や供述調書について、虚偽、誇張、歪曲、憶測を混じえず、申請人等が供述した内容や見聞した事実をありのまま記載するという趣旨が示されています(第3分冊・通し294頁)。

申請書類でも同じです。事実関係に不利な点や説明しにくい点があるからといって、推測で補ったり、都合のよい説明に置き換えたりすることは適切ではありません。事実を正確に整理し、その事情を合理的に説明し、必要な資料で裏付けることが基本になります。

 

審査要領を読むと「必要書類一覧」の見え方が変わる

入管のホームページには、各種申請について提出書類が掲載されています。これらは申請準備の出発点として非常に重要です。しかし、同じ在留資格・同じ申請区分であっても、個々の事情によって追加資料が必要になることがあります。

その理由の一つは、提出書類が単なるチェックリストではなく、「申請人が法令上の要件を満たしていることを確認するための資料」だからです。仕事内容に疑問があれば職務内容を詳しく示す資料が必要になります。会社の事業実態が問題となれば事業内容や取引を示す資料が必要になることがあります。婚姻の実態が論点となれば、婚姻届そのものだけではなく、夫婦としての共同生活や交際経緯を説明する資料が重要になることがあります。

したがって、実務では「必要書類一覧に書いてある資料を全部集めたので完成」と考えるのではなく、「この案件では、どの要件をどの資料で立証するのか」という視点を持つことが重要です。

 

このシリーズで今後解説すること

入管に提出した申請が内部でどのように振り分けられ、審査されるのか

A・B・C・D案件とは何か、追加資料はどの段階で求められるのか

在留資格認定証明書(COE)では何を事前審査しているのか

在留資格変更・在留期間更新では何を確認されるのか

「証する文書」と「明らかにする資料」はどのように使い分けるのか

技術・人文知識・国際業務で、仕事内容、学歴、専攻、職歴、報酬、派遣就労はどう見られるのか

永住許可で、収入、納税、年金、健康保険、届出義務、在留期間等がどう関係するのか

日本人の配偶者等で、婚姻の信ぴょう性や共同生活がどのように確認されるのか

在留資格取消しと更新・変更・永住申請はどのような関係にあるのか

入管の実態調査はどのような法的根拠と考え方で行われるのか

これらを、単に条文の説明だけで終わらせず、「入管法」「審査要領」「現在の出入国在留管理庁の公表資料」「実際の申請書類」をつなげて解説していきます。

 

まとめ―「何を出すか」と同じくらい「なぜその資料が必要か」が重要

入管申請では、必要書類をそろえることはもちろん重要です。しかし、それと同じくらい重要なのが、「その申請ではどの要件が問題となり、その要件をどの資料によって立証するのか」を理解することです。

同じ「技術・人文知識・国際業務」の申請でも、大学の専攻、職務内容、会社の事業内容、雇用形態、転職歴、報酬などによって確認すべき点は変わります。永住許可申請であれば、現在の年収だけでなく、これまでの在留状況、公的義務の履行、現在の在留資格に関する要件なども重要になります。

本シリーズでは、入国・在留審査要領を一つの重要な手掛かりとしながら、必ず現行の入管法と最新の公表資料を確認し、入管審査の考え方をできる限り分かりやすく解説します。申請書類を形式的にそろえるだけではなく、「なぜその資料を出すのか」まで理解することが、より正確で安定した申請実務につながります。

 

次回予告

第2回「入管に申請した案件はどう処理される?審査体制と案件振り分けの基本」

申請書を提出した後、入管内部ではどのような流れで案件が振り分けられ、担当官へ配分されるのでしょうか。第8編「審査体制」を中心に、申請受理から審査開始、進行管理までを実務家の視点から詳しく解説します。

 

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追加資料通知に関する記事

第2回「入管の審査体制」

第3回「A・B・C・D案件とは」

 

主な確認資料・情報源

・公開・開示資料「入国・在留審査要領 第3分冊」第8編~第11編

主な参照箇所:第3分冊・通し1頁、9頁、81頁、94頁、294頁。

・入国・在留審査要領 第12編(令和8年4月の開示文書掲載ページ)

https://yamanaka-bengoshi.jp/2026/04/29/nyuukoku-zairyuu-shinsa-youryou/

・e-Gov法令検索「出入国管理及び難民認定法」

https://laws.e-gov.go.jp/law/326CO0000000319

・出入国在留管理庁「技術・人文知識・国際業務」の在留資格の明確化等について

https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan69.html

・出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」

https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html

・出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(令和8年2月24日改訂)」

https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyukan_nyukan50.html

・出入国在留管理庁「永住許可(入管法第22条)」

https://www.moj.go.jp/isa/applications/procedures/eizyuu_00001.html

 

注記

※本記事は2026年8月13日時点で確認できる法令、出入国在留管理庁の公表資料及び開示資料等を基に作成しています。在留資格制度は法令改正・告示改正・運用変更が行われることがあります。実際の申請に際しては、申請時点の最新情報をご確認ください。

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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