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高度専門職の親を呼び寄せる特例――出産・育児支援で確認する要件と期間
日本の一般的な就労ビザ(技術・人文知識・国際業務など)においては、外国人社員が海外にいる「自分の両親や配偶者の親」を、日本へ呼んで一緒に長期滞在させる在留資格(ビザ)は原則として存在しません。病気や高齢による介護を理由とする「特定活動(老親扶養)」という極めて特殊な救済措置はありますが、これには非常に狭い人道的な門が課されています。
これに対し、在留資格「高度専門職」を持つ外国人材には、他にはない強力な優遇措置(特例)が法律上用意されています。それが、「高度専門職本人、またはその配偶者の『親』を日本へ呼び寄せて、長期間一緒に暮らすことができる特例(特定活動)」の制度です。 母国の優秀な家族の力を借りて、日本でのキャリアと家庭を両立させたい高度人材の方々から圧倒的な人気を集めるこの制度ですが、これには「いつでも、何歳になっても親を呼んで自由に暮らせる」というような無制限の自由があるわけではありません。法律(法務省告示)が定める、極めて緻密で厳格な要件と「期間の制限」について、実務の核心を詳しく解説します。
1. 法律・告示の厳格な要件:世帯年収「800万円」の絶対防衛線
高度専門職の親の呼び寄せ特例(法務省告示に定める特定活動)を申請するためには、まず世帯の経済力において、他のビザにはない高いハードルをクリアしていなければなりません。
• 世帯年収800万円の壁: 高度専門職の本人(およびその配偶者)のポイント計算の基礎となる年収(見込み年収を含む)の総額が、最低でも「800万円以上」であることが絶対条件です。これには親を日本へ呼んだ後の「生活費や医療費を、国の生活保護などに一切頼らず、高度人材の経済力だけで完全に賄うことができる」という証明が求められるためです。1円でも800万円を下回っていれば、書類の受付段階で機械的にはじかれます。
• 同居の義務: 親は日本国内において、高度専門職の本人と「同じ家で同居(住民票を共にする)」しなければなりません。親のために別のマンションを借りて別居させるような運用は、特例の趣旨(家族による支援)に反するため認められません。
2. 目的の限定性:「出産」および「7歳未満の子供の育児支援」のデッドライン
この親の呼び寄せ特例は、親の「老後の老後を日本で過ごさせてあげる(高齢扶養)」ための制度ではありません。法律が認める目的は、以下の2つのライフイベントへの「限定的な支援」のみです。
• 妊娠・出産期の支援: 高度専門職の本人、または配偶者が妊娠中であり、その産前産後の家事や体調管理を手伝ってもらう目的。
• 7歳未満の子供の育児支援: 高度専門職の世帯に、「7歳未満の子供(実子または養子)」が現に存在しており、共働きの高度人材夫婦に代わって、その幼少期の子供の育児や送迎を親に手伝ってもらう目的。
実務上、最も重大なタイムリミット(デッドライン)は、この子供の年齢制限にあります。子供が「7歳の誕生日」を迎えたその日(またはその満了日)の段階で、この親の呼び寄せ特例の法的な根拠はなくなってしまいます。 子供が7歳になった後のビザ更新は、どれだけ親が日本に馴染んでいても、どれだけ年収が高くても、不許可となり、親は母国へ帰国しなければなりません。
3. 実務の最難関:「親の2人同時呼び寄せ」の壁の突破
高度人材の方からよく、「私の母と、妻のお母さんの2人を同時に日本へ呼びたい」というご要望をいただきます。しかし、入管の審査要領の原則は「高度専門職の世帯に対して、滞在できる親は『1名(または実の夫婦1組)』のみ」と厳格に制限しています。
自分の母親と配偶者の母親という、異なる家系の親を2人同時に日本へ滞在させることは、通常の育児特定活動の枠組みでは認められません。ただし、「双子や三つ子が生まれたため、1人の親だけでは物理的に育児の手が回らない」「配偶者が重い病気で入院しており、家事と複数の子供の育児を分担するために、どうしても双方の親の助けが必要である」といった、極めて深刻でやむを得ない個別の人道的事由(特別な事情)を病院の診断書などを添えて論理的に証明できる場合に限り、例外的に2人同時の滞在許可を勝ち取った高度な実務救済事例は存在します。
よくある質問と実務回答
現在、高度専門職1号のビザで働いており、年収は900万円あります。妻は「家族滞在」のビザで、働いていません。来月、初めての子供が生まれるので私の母親を呼びたいのですが、共働きではなく「妻が専業主婦」の場合でも、親の呼び寄せ特例は認められますか? いいえ、現在の入管の厳格な審査実務(審査要領)においては、配偶者が無職の専業主婦である場合、育児のための親の呼び寄せは原則として「不許可」になります。 この特例制度の根本的な立法趣旨は、「優秀な高度人材夫婦が、育児のために仕事を辞めてしまう(またはキャリアを中断する)損失を防ぐため、共働きを維持するためのサポーターとして親の在留を認める」というものだからです。奥様が専業主婦であれば、「わざわざ海外から親を呼ばなくても、奥様自身の力で育児ができるはずだ」と入管は判断します。このルートを使うためには、奥様が「家族滞在の資格外活動で週28時間フルに働いている(または近々就職が内定している)」実績、あるいは大学の大学院に通っている学生(就学)であることの証明を提示し、「共働き(共就学)のため、親の支援がどうしても不可欠である」というロジックを構築する必要があります。
子供がもうすぐ7歳になります。私の母親はこの6年間、日本で本当に一生懸命に孫を育ててくれて、近所にも友達がたくさんでき、いまさら母国へ一人で帰っても生活の基盤がありません。子供が7歳になった後も、何とか「特定活動」などのビザを更新して、このまま日本に住み続ける方法は本当にありませんか? 非常に過酷で冷徹な現実ですが、子供が7歳に達した後の「育児目的の特定活動」の更新は、不許可になります。 これを覆すための、そして極めて難易度の高い実務的な道は、お母様が日本にいるこの6〜7年の間に「別の独立した在留資格への変更要件」を満たしていないかを確認することです。例えば、お母様が母国で長年ビジネスを行っていた経験があるなら、お母様自身が日本で出資して「経営・管理」のビザへ国内で変更する、あるいは高度人材の経済力を背景に、お母様個人を主たる対象とした「特定活動(一般の老親扶養・人道配慮)」へ切り替える手続きです。ただし、老親扶養への切り替えには「親が70歳以上であること」「母国に他の子供や身寄りが本当に1人もいないこと」という、別の非常に厳しい法律の壁をクリアしなければなりません。
高度専門職の親の呼び寄せビザ(特定活動)の申請は、海外から呼び寄せる(在留資格認定証明書交付申請:COE)の手続きになりますか?それとも、最初は「観光(短期滞在)」で日本に連れてきて、後から国内で変更手続きを行うことができますか? 実務上、どちらの方法でも手続きは可能ですが、最も手堅く推奨されるのは「海外からの呼び寄せ(COE申請)」のルートです。 海外に親がいる状態のまま、日本の入管へ高度専門職の年収証明や子供の住民票を出して「特定活動」のCOEを申請し、許可が下りてから正式なビザを持って入国してもらうのが王道です。一方で、出産の間際などで時間がない場合は、お母様を一旦「短期滞在(観光)」で日本へ呼び、入国した後に日本の入管の窓口へ出向いて「短期滞在から特定活動(高度人材の親)への在留資格変更許可申請」を提出する国内変更実務も認められています。この場合、観光目的からの変更という特別な手続きになるため、なぜ海外でのCOEを待てなかったのか(出産の緊迫性など)を理由書で手厚く説明する必要があります。
行政書士鈴木茂事務所からのメッセージ
高度専門職の親呼び寄せ特例は、異国の地である日本で必死にキャリアを築こうとする皆様にとって、最愛の親の温かい手が我が子(孫)に届くという、これ以上ないほど恵まれた、素晴らしい人道的制度です。しかし、その恩恵を享受するためには、年収「800万円」や「子供の年齢(7歳未満)」という、法律の冷徹な数字のデッドラインを管理しなければなりません。
当事務所では、高度人材の皆様が安心して日々のビジネスや研究に没頭できるよう、お母様やお父様を日本へお迎えするためのビザ手続きを最初から最後まで完璧にプロデュースします。世帯の年収の立証から、共働き(または就学)の実態の構築、そして将来のタイムリミットを見据えた家族全体の長期的な在留ライフプランのご提案まで、あなたの「家族の絆」を守るための法的な防衛盾として、誠心誠意サポートいたします。未来の子供たちの健やかな成長のために、ぜひ私にその道案内をお任せください。
• 公的リファレンス・参照一次情報:
o 出入国在留管理庁「高度人材ポイント制における『親の呼び寄せ特例』に関する法務省告示(特定活動)」
o 入国審査要領(高度人材の同伴家族に関する育児要件及び世帯年収の算定マニュアル)
o 児童福祉法及び子どもの権利条約に基づく、外国人の育児特定活動における年齢制限の行政運用指針
【この記事の執筆・監修者】
申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。
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