【特集記事】出国準備「30日」と「31日」の違い――30日でも在留資格変更許可申請はできるのか
在留資格の申請後に付与される「特定活動・出国準備」の30日と31日には、わずか1日でも大きな違いがあります。特例期間、変更申請の可否、出国期限、再申請時の注意点を入管法・公開資料・裁判例から行政書士が解説します。
出国準備「30日」と「31日」の違い――30日でも在留資格変更許可申請はできるのか
在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請の審査後、入管から「特定活動・出国準備」が付与されることがあります。
このとき、在留期間が「30日」とされる場合と、「31日」とされる場合があります。
一見すると、違いはわずか1日です。
しかし、入管法上は、この1日の違いによって、在留期限までに新たな申請をした場合に「特例期間」が適用されるかどうかが変わります。
特に注意しなければならないのは、次の点です。
「30日でも申請書を提出できれば、そのまま結果が出るまで日本にいられる」
この理解は正しくありません。
本記事では、出入国在留管理庁が公表しているガイドライン、在留手続案内、オンライン申請Q&Aに加え、裁判所が公表している判決の中で明らかになった審査実務を踏まえ、「30日」と「31日」の違いを詳しく解説します。
※本記事は2026年7月19日時点で公表されている法令・制度・公的資料に基づいています。
先に結論――30日でも変更申請が一律禁止されているわけではない
結論から申し上げると、出国準備の在留期間が「30日」であっても、在留資格変更許可申請をすること自体が、法令上一律に禁止されているわけではありません。
出入国在留管理庁の在留資格変更許可申請の案内では、手続対象者を「現に有する在留資格の変更を受けようとする外国人」とし、申請期間を「在留資格の変更の事由が生じたときから在留期間満了日以前」としています。
この一般的な手続案内には、「特定活動・出国準備30日の人は申請できない」という一律の除外規定は記載されていません。
ただし、ここで最も重要なのは、次の点です。
出国準備30日の場合
在留資格変更許可申請を提出しても、申請中の特例期間は適用されません。
そのため、在留期限までに新しい在留資格への変更許可などが実際に出なければ、原則として期限までに出国しなければなりません。
出国準備31日の場合
在留期限までに適法な在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行った場合、要件を満たせば特例期間の対象となる可能性があります。
つまり、「30日」と「31日」の中心的な違いは、
「申請ができるか、できないか」
ではなく、
「申請中に在留期限を越えて日本に滞在できるか」
という点にあります。
「出国準備」は独立した在留資格名ではない
一般には「出国準備ビザ」「出国準備30日」などと呼ばれますが、入管法上、「出国準備」という名称の独立した在留資格が設けられているわけではありません。
法的な構造としては、通常、次のようになります。
在留資格は「特定活動」で、法務大臣が個別に指定する活動の内容が「出国準備を目的とする活動」とされています。
在留資格「特定活動」は、法務大臣が個々の外国人について特に指定する活動を行うための在留資格です。
なお、「特定活動・出国準備」と、入管法違反者を対象とする「出国命令制度」は別の制度です。
出国準備の特定活動を付与された時点で、直ちに退去強制処分や出国命令を受けたという意味ではありません。
もっとも、付与された在留期限を超えて滞在すれば、不法残留となる可能性があるため、期限管理には十分な注意が必要です。
どのような流れで「出国準備」が付与されるのか
在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請について、入管が申請どおりには許可できないと判断した場合、申請人に対して、申請内容を「出国準備を目的とする申請」に変更する意思があるか確認されることがあります。
裁判所が公表した判決では、入管から申請人に対して、
申請どおりの内容では許可できないものの、申請内容を出国準備目的に変更するのであれば、申請内容変更申出書を提出するよう通知した事例が確認されています。
申請人が申請内容変更申出書を提出した結果、元の申請内容が出国準備を目的とする申請に変更され、「出国準備・89日」が許可された事例もあります。
この手続は、単に「元の申請が不許可になり、その後に別の出国準備資格が自動的に与えられる」というものとは限りません。
実務上は、
元の変更・更新申請
↓
申請どおりには許可できない旨の通知
↓
申請内容変更申出書への署名・提出
↓
元の申請を出国準備目的の申請に変更
↓
特定活動・出国準備を許可
という流れになることがあります。
「申請どおり許可できない」という通知は正式な不許可処分なのか
ここは、実務上とても重要なポイントです。
裁判例では、入管から「申請どおりの内容では許可できない」と通知された後、申請人が申請内容変更申出書を提出した場合、元の申請について正式な不許可処分がされたのではなく、最終処分前に申請人自身が申請内容を出国準備へ変更したものと判断された事例があります。
つまり、書面に「申請どおりには許可できない」と記載されていても、それだけで必ず正式な不許可処分が成立しているとは限りません。
申請人が申請内容変更申出書を提出し、出国準備の許可を受けた場合には、
「元の申請が正式に不許可となったのか」
それとも、
「不許可処分が行われる前に、本人が申請内容を変更したのか」
を、通知書、申請内容変更申出書、パスポートの指定書などから確認する必要があります。
この違いは、不許可理由の確認、再申請の方針、行政訴訟を検討する場合などにも関係します。
「30日」と「31日」を分ける特例期間とは
在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を在留期限までに行ったものの、期限までに結果が出ない場合があります。
この場合、一定の要件を満たす人は、
「申請に対する処分が行われるとき」
または、
「従前の在留期限から2か月が経過する日」
のいずれか早い時まで、引き続き従前の在留資格で日本に在留できます。
これが「特例期間」です。
しかし、出入国在留管理庁は、在留期間が30日以下の人については、この取扱いが適用されないと案内しています。
したがって、法律上の境目は次のようになります。
在留期間30日
「30日以下」に該当するため、特例期間は適用されません。
在留期間31日
「30日以下」には該当しないため、ほかの要件を満たせば特例期間の対象となり得ます。
31日は、特例期間の対象となる可能性を残す最短の日数ということになります。
30日の場合、申請書を受け付けてもらえば期限後も滞在できるのか
できません。
出国準備30日の人が在留期限前に在留資格変更許可申請を提出し、申請受付票を受け取ったとしても、それだけで在留期限が延長されるわけではありません。
例えば、在留期限が8月31日で、8月25日に変更申請をしたとします。
その場合、8月31日までに変更許可が出れば、新しい在留資格で引き続き在留できます。
一方、8月31日までに結果が出なければ、申請が審査中であっても、9月1日以降に適法に在留できる根拠が当然に生じるわけではありません。
「申請中だから大丈夫」
「受付票があるからオーバーステイにはならない」
という判断は非常に危険です。
在留期限までに新しい許可や出国準備期間の更新許可などが得られない場合は、原則として期限までに出国する必要があります。
30日でも変更申請を検討できるケース
出国準備30日であっても、在留期限までに新しい事情が生じ、その事情が希望する在留資格の要件に明確に該当する場合には、変更申請を検討する余地があります。
例えば、次のようなケースです。
日本人または永住者との真正な婚姻が成立した場合
単に婚姻届を提出したというだけではなく、交際経緯、同居状況、夫婦としての生活実態、生活費、家族の認識などを含めて、婚姻の信ぴょう性を説明する必要があります。
在留資格の要件を満たす新しい就職先が決まった場合
「技術・人文知識・国際業務」などへの変更であれば、学歴・職歴と職務内容の関連性、専門性、報酬、雇用の安定性などが確認されます。
前回の不許可原因を解消する重要資料が新たに取得できた場合
例えば、取得できなかった職歴証明書が取得できた、職務内容が専門業務へ実質的に変更された、会社の事業内容や雇用の必要性を示す客観資料が整った、といった場合です。
前回申請時には存在しなかった人道上の事情が生じた場合
本人や家族の病気、子どもの養育、家族関係など、在留の必要性を基礎付ける重大な事情が新たに発生した場合です。
ただし、「理由書を書き直した」「書類を少し増やした」というだけでは、前回の問題が解消されたとは評価されにくいことがあります。
重要なのは、説明方法ではなく、許可判断の前提となる事実や証拠が変わっているかどうかです。
出国準備中の再申請で審査されるポイント
在留資格変更許可は、必要書類を提出すれば機械的に認められるものではありません。
出入国在留管理庁のガイドラインでは、在留資格の変更は、「適当と認めるに足りる相当の理由」がある場合に限って許可され、申請人が行おうとする活動、これまでの在留状況、日本に在留する必要性などが総合的に判断されるとしています。
また、在留資格該当性は許可のための必要要件であり、上陸許可基準についても原則として適合することが求められます。
具体的には、次のような事項が確認されます。
希望する在留資格に該当する活動であるか
技術・人文知識・国際業務であれば専門業務に該当するか、日本人の配偶者等であれば真正な婚姻と夫婦生活が認められるかなど、希望資格の中心的な要件を満たす必要があります。
上陸許可基準などに適合しているか
学歴、職歴、報酬、会社の規模や継続性など、資格ごとに定められた基準への適合が確認されます。
従前の在留資格に応じた活動を行っていたか
退学後も長期間在留していた場合、就労資格と異なる仕事をしていた場合、資格外活動の制限を超えて働いていた場合などは、消極的な事情として評価される可能性があります。
素行や在留状況に問題がないか
刑事処分、不法就労、虚偽申請、過去の入管法違反などが確認されます。
安定した生活を継続できるか
本人だけでなく、世帯全体の収入、資産、扶養状況などから、日本で安定した生活を継続できるかが判断されます。
税金、健康保険料、年金、届出義務を履行しているか
高額・長期間・悪質な未納や、所属機関に関する届出を怠っている場合などは、審査上の消極的な要素となります。
30日以内に審査結果が出るとは限らない
出入国在留管理庁が公表している在留資格変更許可申請の標準処理期間は、原則として1か月から2か月です。
出国準備30日の場合、付与された日から直ちに準備を始めても、通常の標準処理期間と同程度か、それより短い時間しかありません。
さらに、申請準備、会社書類の取得、婚姻関係資料の収集、翻訳、理由書作成、入管への事前相談などにも時間がかかります。
そのため、30日の案件では、
「申請を提出できるか」
だけではなく、
「期限までに審査を完了し、許可を受けられる現実的な可能性があるか」
まで考える必要があります。
早期審査を求める上申書を提出することは考えられますが、上申書を提出したからといって、入管に期限内の処分を義務付けられるわけではありません。
31日なら変更申請は許可されやすいのか
31日が付与されたからといって、次の変更申請が許可されやすい、あるいは再申請が認められているとまではいえません。
31日の法的な意味は、在留期限までに適法な申請を行った場合に、特例期間の対象となり得るという点にあります。
しかし、特例期間は「審査結果が出るまで適法に待つことができる制度」であり、「申請が許可される制度」ではありません。
31日が付与されていても、前回の不許可原因が解消されていなければ、再び不許可となる可能性があります。
したがって、
「30日なら絶対に再申請できない」
「31日なら再申請してもよい」
と機械的に判断するのではなく、前回の申請内容、不許可または許可不能とされた理由、現在の事情、提出可能な資料を個別に確認する必要があります。
出国準備中の申請はオンラインではできない
出入国在留管理庁のオンライン申請Q&Aでは、「特定活動・出国準備期間」の在留資格を持つ人、または同資格への変更を希望する人は、在留申請オンラインシステムの対象外とされています。
したがって、出国準備中に在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請を行う場合は、原則として、住居地を管轄する地方出入国在留管理官署の窓口で手続を行う必要があります。
申請取次行政書士による取次申請を利用する場合でも、事案によっては本人の出頭や事情説明を求められることがあります。
出国準備30日を付与された場合の対応手順
出国準備30日が付与された場合には、時間を空費せず、次の順番で確認することが重要です。
1.パスポートの指定書と在留期限を確認する
在留資格が「特定活動」であることだけでなく、指定された活動内容が出国準備であること、在留期限がいつまでかを正確に確認します。
2.申請内容変更申出書を提出したか確認する
元の申請が正式に不許可となったのか、本人が申請内容を出国準備へ変更したのかを整理します。
3.入管から説明された許可できない理由を整理する
学歴、職歴、職務内容、婚姻の信ぴょう性、収入、会社の安定性、在留状況など、どの点が問題とされたのかを特定します。
4.前回と異なる新しい事情・証拠があるか確認する
同じ事実関係のまま理由書だけを変更しても、結果が変わらない可能性があります。
5.申請と出国準備を並行して進める
変更申請を提出する場合でも、航空券、住居、勤務先、荷物、銀行口座などの出国準備を止めてはいけません。
6.期限までに許可が出ない場合の方針を決める
期限内に出国し、海外から在留資格認定証明書交付申請を行って再入国する方法も検討します。
よくあるご質問
Q.30日の出国準備を付与されたら、必ず出国しなければなりませんか
在留期限までに新しい在留資格への変更許可や出国準備期間の更新許可などが出れば、必ずしも出国する必要はありません。
しかし、30日には特例期間が適用されないため、期限までに新しい許可が出なければ、原則として出国が必要です。
Q.変更申請を出せば、入管が結果を出すまで待てますか
30日の場合は待てません。
申請を受け付けてもらったことと、在留期限を越えて適法に滞在できることは別です。
Q.31日なら必ず特例期間になりますか
在留期限までに適法な在留資格変更許可申請または在留期間更新許可申請を行い、所定の要件を満たす必要があります。
また、特例期間に入ったとしても、変更申請の許可が保証されるわけではありません。
Q.出国準備期間を延長できますか
在留期間更新許可申請を行うこと自体は考えられますが、単に「もう少し日本にいたい」という理由だけで当然に認められるものではありません。
病気、航空便、家族事情など、期限内に出国できない具体的かつやむを得ない事情と、それを証明する資料が必要となります。
Q.前回と同じ申請をもう一度出してもよいですか
申請書の提出自体よりも、前回許可できないとされた原因が解消されているかが重要です。
同じ会社、同じ仕事、同じ資料、同じ事実関係のまま再申請しても、同じ判断となる可能性があります。
まとめ――30日は「申請中だから大丈夫」が通用しない
出国準備の「30日」と「31日」は、わずか1日の違いですが、入管法上の効果は大きく異なります。
出国準備30日でも、在留資格変更許可申請が法令上一律に禁止されているわけではありません。
しかし、30日以下の在留期間には特例期間が適用されません。
そのため、
「在留期限までに申請をすればよい」
のではなく、
「在留期限までに実際の許可を得られるか」
が問題になります。
一方、31日は、期限内に適法な変更・更新申請を行えば、特例期間の対象となる可能性があります。
ただし、31日が付与されたことは、再申請の許可や将来の在留を保証するものではありません。
出国準備が付与された案件では、次の事項を早急に確認する必要があります。
前回申請の処理経過
許可できないとされた具体的な理由
申請内容変更申出書の有無
新しい事情や証拠の有無
在留期限までに許可を得られる可能性
出国後に認定証明書交付申請を行う方法
特に出国準備30日の案件は、1日、2日の遅れが重大な結果につながることがあります。
申請できるかどうかだけで判断せず、期限管理、前回申請の分析、再申請の実現可能性、出国後の手続まで含めて検討することが重要です。
出国準備・不許可後の再申請についてお困りの方へ
行政書士鈴木茂事務所では、在留資格変更許可申請や在留期間更新許可申請について、申請どおりには許可できないと説明された方、出国準備30日・31日を付与された方からのご相談を承っています。
ご相談では、単に申請書を作り直すのではなく、前回の申請内容、入管から説明された理由、現在の在留期限、新たに生じた事情、提出可能な資料を確認したうえで、次の方針を検討します。
日本国内で変更申請を行うべきか
いったん出国して認定証明書交付申請を行うべきか
前回の問題点を解消できる資料があるか
期限までに申請・許可を得られる現実的可能性があるか
出国期限が迫っている場合には、できるだけ早い段階でご相談ください。
行政書士鈴木茂事務所
申請取次行政書士・特定行政書士
行政書士 鈴木 茂
※個別案件の結論は、在留資格、指定書、在留期限、過去の申請内容、入管から受けた説明、家族関係、雇用状況等によって異なります。本記事は一般的な制度解説であり、個別案件の許可を保証するものではありません。
主な参考資料
・出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請」
・出入国在留管理庁「特例期間とは?」
・出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」
・出入国在留管理庁「在留申請時のお知らせ及び注意」
・出入国在留管理庁「オンラインでの申請手続に関するQ&A」
・裁判所公表判例「在留資格変更許可申請及び申請内容変更申出書に関する判決」
・出入国管理及び難民認定法第20条