第6回 お客様お悩み相談

外国人を経理・財務担当で雇いたい。技人国と単純事務の線引きは?

 

「外国人を経理担当として採用します。請求書処理、仕訳、月次決算、海外子会社との数字の取りまとめまで担当予定です。技人国で大丈夫でしょうか?」というご相談です。

 

先に結論

経理・財務は技人国の人文知識として検討できる代表的な分野ですが、経理部という肩書だけで足りるわけではありません。会計・財務の専門知識を用いる月次・年次決算、管理会計、予算管理、資金管理、海外会計対応等が実際の中心業務であることを、学歴・職歴と結びつけて説明します。

 

1.制度上の整理

技術・人文知識・国際業務では、在留カードに会社名が印字されているかどうかだけで判断するのではなく、日本の公私の機関との契約、実際の職務内容、学歴・職歴との関係、報酬、在留状況を一体として確認することが大切です。勤務先や契約関係に変化があったときは、届出だけで足りるのか、更新・変更や就労資格証明書まで必要なのかを切り分けます。

技人国の人文知識は、人文科学分野の知識を必要とする業務を対象とします。会計学、経営学、経済学等を背景とする経理・財務は検討対象になりますが、単純な入力・ファイリングのみでは専門性が伝わりにくくなります。

企業規模が小さく、外国人1名分の専門的な経理業務量があるか疑問を持たれ得る場合は、月次業務、決算、資金繰り、海外取引、管理会計など具体的な業務量を示すことが重要です。

税理士等の独占業務を行うという説明は避け、社内経理・財務担当者として実際に行う業務を正確に記載します。資格を要する「法律・会計業務」の在留資格とは別の整理です。

 

2.このケースで確認したいポイント

仕訳入力だけでなく判断・分析を伴う会計財務業務がどの程度あるか

学歴の専攻科目(会計、財務、経営、経済等)との関連性

会社の売上規模、取引件数、海外取引等から業務量を説明できるか

日本人同等以上の報酬が設定されているか

一般事務・庶務の比率が過大になっていないか

ここで重要なのは、項目を一つずつ切り離して考えないことです。申請書、届出、契約書、課税・社会保険資料、会社資料などに同じ事実が異なる形で現れます。日付・会社名・職務・収入・家族関係を時系列でそろえ、資料相互に矛盾がない状態を作ることが、追加資料対応や不許可リスクを減らす基本になります。

 

3.準備しておきたい資料

具体的な職務内容説明書・業務フロー

卒業証明書・成績証明書または実務経験資料

会社組織図、経理部門の人数・分担資料

月次決算、予算管理、海外取引等の業務が存在することを示す会社資料

上記は典型的な確認資料であり、すべてのケースで同じ資料が法定必須という意味ではありません。出入国在留管理庁の公式提出書類を基礎にしつつ、個別事情を説明するために必要な補足資料を選びます。外国語資料には、審査上意味を持つ氏名・日付・金額・身分関係等を正確に反映した日本語訳を付けます。

 

4.行政書士として考える実務上の進め方

・業務を日次・月次・年次に分けて書き出す

専門知識を使う場面を明確にする

・学歴・職歴との対応表を作る

・雇用理由と会社側の業務量を一貫して説明する

申請を急ぐほど、先に結論を決めて資料を後付けしたくなりますが、順序は逆です。まず事実を確認し、現在の法令・公式運用に当てはめ、足りない資料と説明が必要な点を整理してから申請方針を決めます。特に在留期限や14日以内の届出期限がある場合は、期限管理と実体審査の準備を並行して進めます。

 

5.よくある誤解

「簿記3級を持っていれば必ず技人国になる」「経理ソフトを使う仕事なら専門職」という判断はできません。資格の有無より、実際の業務内容と学歴・職歴要件の適合を見ます。

入管手続では、似た状況でも現在の在留資格、申請区分、経歴、会社・家族の状況によって結論が変わります。インターネット上の過去事例をそのまま自分のケースに当てはめず、申請時点の制度と事実関係で確認することが大切です。

 

よくある質問

Q1 請求書の入力や経費精算も担当します。問題ですか?

A 補助的な業務が一部含まれることだけで直ちに不可とは限りません。活動全体として会計・財務の専門業務が中心であるかを確認します。

Q2 海外の会計資格を持っています。プラスになりますか?

A 専門性を示す資料にはなりますが、在留資格の許可を保証するものではありません。学歴・職歴、職務内容、会社の業務量等と合わせて評価されます。

Q3 税務申告を担当させてもよいですか?

A 社内で資料作成等を行うことと、法令上資格者に限定された業務は区別する必要があります。実際の職務を法令に沿って設計してください。

 

行政書士へ相談した方がよいケース

在留期限・届出期限が近く、手続の優先順位が分からない

公式の提出書類一覧だけでは、自分の事情をどう説明すべきか判断しにくい

転職、失業、家族変更、会社の経営状況など申請後・前回許可後に事情が変わっている

過去の届出、税金、年金、社会保険、在留状況に気になる点がある

不許可を避けるため、申請前に事実と立証資料の整合性を確認したい

行政書士鈴木茂事務所では、単に書類をそろえるだけでなく、現在の在留資格、これまでの経緯、申請後の生活・就労計画を確認し、どの事実をどの資料で説明するかを整理します。許可を保証することはできませんが、申請前に論点を明確にし、入管に伝わりやすい形へ整えることができます。

 

まとめ

経理・財務は技人国の人文知識として検討できる代表的な分野ですが、経理部という肩書だけで足りるわけではありません。会計・財務の専門知識を用いる月次・年次決算、管理会計、予算管理、資金管理、海外会計対応等が実際の中心業務であることを、学歴・職歴と結びつけて説明します。

在留資格の手続は、制度を知るだけでなく、自分の事実関係を正確に当てはめる作業が必要です。少しでも判断に迷う事情がある場合は、期限直前ではなく、資料を集められる段階で相談することをおすすめします。

 

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主な公的情報源

・出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/gijinkoku.html

・出入国在留管理庁「在留資格の変更、在留期間の更新許可のガイドライン」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/resources/nyuukokukanri07_00058.html

※本記事は2026年8月16日時点で確認できる法令・出入国在留管理庁の公表情報を基に作成しています。制度改正、告示改正、運用変更等が行われることがありますので、実際の申請時には最新の公式情報をご確認ください。

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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