第17回 お客様お悩み相談

日本人配偶者が海外から帰国したばかりで課税証明書が取れません。配偶者ビザの生計資料は?

 

よくあるご相談

「海外で長く暮らしていた日本人配偶者が先に帰国しました。住民税の課税証明書も納税証明書も取れません。外国人配偶者のビザ申請はできないのでしょうか?」というご相談です。

 

先に結論

課税・納税証明書が発行されない事情がある場合でも、それだけで配偶者ビザ申請ができないわけではありません。出入国在留管理庁の公式案内は、入国後間もない場合や転居等により通常の住民税資料で滞在費用を証明できないとき、預貯金や雇用予定等の別資料を提出する扱いを案内しています。なぜ証明書が出ないのかと、今後どう生活費を賄うのかを分けて説明します。

 

1.制度上の整理

身分系の在留資格では、戸籍や結婚証明書などの形式的な身分関係だけでなく、実際の共同生活、扶養関係、生計、家族の在留資格との整合性が重要になります。家族の状況が変わった場合は、家族全員が同じ在留資格になるとは限らないため、一人ずつ法的な地位を確認します。

「日本人の配偶者等」の公式提出書類では、直近1年分の住民税課税(非課税)証明書・納税証明書が基本ですが、入国後間もない場合や転居等で証明できない場合には「その他」の資料を提出する案内があります。

海外帰国直後は、国内の前年所得がないことと、現在・将来の扶養能力がないことは同じではありません。帰国後の就職、会社の転勤、内定、預貯金、外国人配偶者の収入見込み等を組み合わせます。

生計資料だけを整えても、婚姻実体の立証は別に必要です。夫婦の共同生活、帰国理由、住居、質問書の記載と収入資料の内容を一致させます。

 

2.このケースで確認したいポイント

自治体で課税・納税証明書が発行されない理由

海外での勤務・所得と帰国後の勤務予定

夫婦名義の預貯金と当面の生活費

日本での住居費・家族人数

外国人配偶者が来日後に就労する予定がある場合、その実現可能性

ここで重要なのは、項目を一つずつ切り離して考えないことです。申請書、届出、契約書、課税・社会保険資料、会社資料などに同じ事実が異なる形で現れます。日付・会社名・職務・収入・家族関係を時系列でそろえ、資料相互に矛盾がない状態を作ることが、追加資料対応や不許可リスクを減らす基本になります。

 

3.準備しておきたい資料

課税証明書が発行できない事情を示す住民票・転入時期資料

帰国前後の在職証明、転勤辞令、内定通知等

預金残高証明、通帳写し

住居契約書、家計見込表

外国の所得・納税資料(必要に応じて日本語訳)

上記は典型的な確認資料であり、すべてのケースで同じ資料が法定必須という意味ではありません。出入国在留管理庁の公式提出書類を基礎にしつつ、個別事情を説明するために必要な補足資料を選びます。外国語資料には、審査上意味を持つ氏名・日付・金額・身分関係等を正確に反映した日本語訳を付けます。

 

4.行政書士として考える実務上の進め方

・証明書が出ない理由を自治体で確認する

・帰国後12か月程度の生活費の見通しを作る

・客観的な資産・就業資料で裏付ける

・質問書や理由書で海外生活から日本定住への流れを自然に説明する

申請を急ぐほど、先に結論を決めて資料を後付けしたくなりますが、順序は逆です。まず事実を確認し、現在の法令・公式運用に当てはめ、足りない資料と説明が必要な点を整理してから申請方針を決めます。特に在留期限や14日以内の届出期限がある場合は、期限管理と実体審査の準備を並行して進めます。

 

5.よくある誤解

「課税証明書がない=無収入」「日本人配偶者に国内年収がなければ配偶者ビザは申請できない」とは限りません。重要なのは、証明書がない理由と今後の安定した生活を資料で説明することです。

入管手続では、似た状況でも現在の在留資格、申請区分、経歴、会社・家族の状況によって結論が変わります。インターネット上の過去事例をそのまま自分のケースに当てはめず、申請時点の制度と事実関係で確認することが大切です。

 

よくある質問

Q1 預金はいくらあればよいですか?

A 公表された一律の最低預金額があるわけではありません。家族人数、住居費、就職予定等を踏まえ、具体的な生活設計として説明します。

Q2 外国人配偶者の海外収入も使えますか?

A 夫婦の生計を支える実際の収入・資産として説明できる場合があります。ただし来日後も継続するのか、在留資格上適法な働き方かを確認します。

Q3 親から援助を受ける予定です。認められますか?

A 支援の必要性、支援者との関係、支援者の資力、期間等を具体的に示す必要があります。長期的な夫婦の自立した生活計画も重要です。

 

行政書士へ相談した方がよいケース

在留期限・届出期限が近く、手続の優先順位が分からない

公式の提出書類一覧だけでは、自分の事情をどう説明すべきか判断しにくい

転職、失業、家族変更、会社の経営状況など申請後・前回許可後に事情が変わっている

過去の届出、税金、年金、社会保険、在留状況に気になる点がある

不許可を避けるため、申請前に事実と立証資料の整合性を確認したい

行政書士鈴木茂事務所では、単に書類をそろえるだけでなく、現在の在留資格、これまでの経緯、申請後の生活・就労計画を確認し、どの事実をどの資料で説明するかを整理します。許可を保証することはできませんが、申請前に論点を明確にし、入管に伝わりやすい形へ整えることができます。

 

まとめ

課税・納税証明書が発行されない事情がある場合でも、それだけで配偶者ビザ申請ができないわけではありません。出入国在留管理庁の公式案内は、入国後間もない場合や転居等により通常の住民税資料で滞在費用を証明できないとき、預貯金や雇用予定等の別資料を提出する扱いを案内しています。なぜ証明書が出ないのかと、今後どう生活費を賄うのかを分けて説明します。

在留資格の手続は、制度を知るだけでなく、自分の事実関係を正確に当てはめる作業が必要です。少しでも判断に迷う事情がある場合は、期限直前ではなく、資料を集められる段階で相談することをおすすめします。

 

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主な公的情報源

・出入国在留管理庁「在留資格『日本人の配偶者等』」 https://www.moj.go.jp/isa/applications/status/spouseorchildofjapanese01.html

※本記事は2026年9月6日時点で確認できる法令・出入国在留管理庁の公表情報を基に作成しています。制度改正、告示改正、運用変更等が行われることがありますので、実際の申請時には最新の公式情報をご確認ください。

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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