特集記事

技術・人文知識・国際業務は「単純労働に見える仕事」でも許可されるのか

はじめに

外国人を雇用したい企業様から、非常に多いご相談があります。

「この仕事は、技術・人文知識・国際業務で申請できますか。」

特に、飲食店、クリーニング店、小売店、工場、ホテル、サービス業、製造業、物流関連の現場を含む会社では、判断が難しくなります。求人票や店舗名だけを見ると、「接客」「洗浄」「検品」「梱包」「店舗運営」「現場管理」といった言葉が並び、入管審査では単純労働ではないかと疑われやすいからです。

しかし、在留資格の審査で重要なのは、業種名や店舗名だけではありません。実際に従事する業務が、自然科学・人文科学の分野に属する技術又は知識を要する業務か、又は外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務か、そして申請人の学歴・職歴と職務内容との間に合理的な関連性があるかが問われます。

本記事では、在留資格「技術・人文知識・国際業務」の制度の基本に加え、令和8年4月15日以降のカテゴリー3・4に関する追加提出書類、主に言語能力を用いる対人業務におけるCEFR B2相当の言語能力資料、令和8年6月14日から始まった特定在留カード等の制度、新様式の在留カードの実務上の注意点も踏まえ、特殊クリーニング会社で3年許可を得た事例をもとに、国際業務専門の行政書士の視点から深掘りして解説します。

1. 在留資格「技術・人文知識・国際業務」とは

「技術・人文知識・国際業務」は、日本の会社等との契約に基づき、理学、工学その他の自然科学の分野、又は法律学、経済学、社会学その他の人文科学の分野に属する技術・知識を要する業務、あるいは外国の文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務に従事するための在留資格です。

出入国在留管理庁の在留資格一覧では、該当例として、機械工学等の技術者、通訳、デザイナー、私企業の語学教師、マーケティング業務従事者等が挙げられています。在留期間は、5年、3年、1年又は3月です。

大切なのは、この在留資格が「外国人であれば誰でも働ける就労ビザ」ではないという点です。専門的な知識や技術を活かす業務であること、申請人の学歴・職歴と職務内容に関連性があること、日本人と同等額以上の報酬を受けること、そして会社側にその業務を継続して担当させる実体と必要性があることが求められます。

 

■ 技術

・主な内容:自然科学分野の技術・知識を要する業務

・実務での見られ方:IT、機械、化学、品質管理、設計、技術開発、工程改善など。単なる作業ではなく、分析・検証・判断を伴うかが重要です。

 

■ 人文知識

・主な内容:法律学、経済学、社会学、経営学等の知識を要する業務

・実務での見られ方:経理、総務、人事、マーケティング、営業企画、貿易実務、事業企画など。大学等で学ぶ体系的知識との関連性を説明します。

 

■ 国際業務

・主な内容:外国文化に基盤を有する思考・感受性を必要とする業務

・実務での見られ方:翻訳・通訳、語学指導、海外取引、広報、商品開発、デザイン等。国際性だけでなく、業務水準と経験要件が問題になります。

 

2. 最新データから見る「技人国」の重要性

日本で働く外国人は年々増加しており、専門的・技術的分野の人材受入れは、企業経営にとって現実的かつ重要な選択肢となっています。

令和7年末現在の在留外国人数は4,125,395人で、在留資格別では「永住者」に次いで「技術・人文知識・国際業務」が475,790人となっています。これは、技人国が単なる一部の専門職だけの制度ではなく、日本企業の人材採用に広く関わる在留資格になっていることを示しています。

また、厚生労働省の令和7年10月末時点の「外国人雇用状況」によれば、外国人労働者数は2,571,037人、外国人を雇用する事業所数は371,215所で、いずれも過去最多です。在留資格別では、「専門的・技術的分野の在留資格」が865,588人で最も多くなっています。

 

■ 令和7年末の在留外国人数

・人数・件数:4,125,395人

・実務上の意味:在留外国人全体が400万人を超え、外国人雇用は特別な例外ではなくなっています。

 

■ 令和7年末の技術・人文知識・国際業務の在留者数

・人数・件数:475,790人

・実務上の意味:永住者に次ぐ規模であり、企業の専門職採用で中心的な在留資格です。

 

■ 令和7年10月末の外国人労働者数

・人数・件数:2,571,037人

・実務上の意味:外国人労働者の雇用管理、在留資格確認、届出義務の重要性が高まっています。

 

■ 令和7年10月末の外国人雇用事業所数

・人数・件数:371,215所

・実務上の意味:中小企業・小規模事業者でも外国人雇用が一般化しています。

 

■ 専門的・技術的分野の在留資格の労働者数

・人数・件数:865,588人

・実務上の意味:技人国、高度専門職、経営・管理、特定技能等を含む分野が最も大きな区分です。

 

3. 審査で見られる4つの柱

技術・人文知識・国際業務の審査では、会社が雇用契約を結んでいるだけでは足りません。入管審査では、少なくとも次の4つの柱を整えて説明する必要があります。

特に、現場業務を含む案件で問題になりやすいのは「活動該当性」と「学歴・職歴との関連性」です。会社側が専門的な仕事だと考えていても、申請書類に「洗浄」「接客」「梱包」「清掃」「検品」とだけ記載されていれば、専門的業務ではなく一般作業と受け止められる可能性があります。

 

■ 活動該当性

・確認される内容:従事予定業務が、自然科学・人文科学の専門知識又は国際業務に該当するか

・書類作成上のポイント:職務内容を作業名ではなく、分析、設計、検証、改善、管理、判断の内容まで具体化します。

 

■ 学歴・職歴との関連性

・確認される内容:申請人が学んだ内容や実務経験と、従事予定業務に関連性があるか

・書類作成上のポイント:卒業証明書だけでなく、成績証明書、専攻科目、研究テーマ、職歴証明との接続を説明します。

 

■ 契約・報酬の適正性

・確認される内容:日本の会社等との契約に基づき、日本人と同等額以上の報酬が予定されているか

・書類作成上のポイント:雇用契約書、労働条件通知書、賃金規程、同職種の日本人給与との整合性を確認します。

 

■ 会社・業務の安定性

・確認される内容:会社の事業内容、業務量、雇用継続性、職務の実在性があるか

・書類作成上のポイント:会社案内、取引実績、決算書、組織図、業務量、担当部署、将来計画で裏付けます。

 

4. 「単純労働に見える仕事」が問題になる理由

技人国の難しさは、会社側が「専門的な仕事」と考えていても、外から見ると単純作業に見えてしまうことです。クリーニング店であれば、洗浄、アイロン、プレス、受付、梱包、商品管理といった言葉が並びます。飲食店であれば、調理、接客、配膳、清掃、在庫管理という表現になりがちです。

しかし、入管審査では、職務名や業種名よりも、在留期間中の活動全体として、主たる業務が在留資格に該当するかが見られます。たとえば、一時的な研修として現場作業を経験することと、在留期間の大半を現場作業に従事することは、評価が大きく異なります。

そのため、申請書類では、「何をするか」だけでなく、「なぜ専門知識が必要なのか」「どの知識を使って判断するのか」「一般作業者と何が違うのか」「研修後にどの専門業務へ移行するのか」を説明しなければなりません。

 

■ 洗浄、接客、梱包を担当

・入管から見た懸念:一般作業、人手不足補充、単純労働と見られやすい

・改善の方向性:素材別の洗浄条件の検証、薬剤管理、品質管理、顧客別工程設計などに具体化します。

 

■ 店舗業務全般を担当

・入管から見た懸念:主たる業務が不明確で、在留資格該当性が判断しにくい

・改善の方向性:業務割合、専門業務と補助業務の区分、1日の業務フローを示します。

 

■ 研修として現場に入ります

・入管から見た懸念:研修の名目で長期に一般作業をさせるのではないかと疑われる

・改善の方向性:研修期間、研修目的、研修後の配属、同じ研修を日本人にも行うかを明確にします。

 

■ 日本語ができるので採用

・入管から見た懸念:日本語能力だけでは技人国の専門性にならない

・改善の方向性:言語能力を使う専門的業務、学歴・職歴との関連性、業務上の必要性を説明します。

 

5. 令和8年4月15日以降のカテゴリー3・4の重要な変更

技術・人文知識・国際業務では、所属機関の規模・実績等によりカテゴリー1から4に区分され、提出資料が異なります。実務上、中小企業、設立間もない会社、法定調書合計表の提出実績がない会社では、カテゴリー3又はカテゴリー4に該当することが多くなります。

令和8年4月15日以降の申請から、カテゴリー3又は4に該当する場合には、追加で「所属機関の代表者に関する申告書」の提出が必要となりました。さらに、主に言語能力を用いて対人業務等に従事する場合には、業務上使用する言語についてCEFR B2相当の言語能力を有することを証する資料が必要となります。

これは、カテゴリー3・4の会社で技人国を申請する際、会社の実態、代表者の関与、申請人の言語能力、業務の専門性をより具体的に確認する方向に運用が進んでいることを意味します。

 

■ カテゴリー1

・典型例:上場企業、国・地方公共団体、独立行政法人、一定の認定企業等

・実務上の注意点:資料省略が比較的認められやすいものの、業務内容が不明確であれば追加資料を求められることがあります。

 

■ カテゴリー2

・典型例:源泉徴収税額が1,000万円以上の団体・個人、又は一定条件のオンライン申請利用承認機関

・実務上の注意点:会社の信用力は比較的高く見られますが、職務内容・学歴関連性の説明は必要です。

 

■ カテゴリー3

・典型例:前年分の職員の給与所得の源泉徴収票等の法定調書合計表を提出した団体・個人(カテゴリー2を除く)

・実務上の注意点:中小企業で多い区分です。雇用契約、会社案内、決算書、業務内容、代表者申告書、言語能力資料の要否を丁寧に確認します。

 

■ カテゴリー4

・典型例:上記のいずれにも該当しない団体・個人

・実務上の注意点:新設会社、初めて人を雇う会社等で多く、事業計画、給与支払事務所等の開設届、納付関係資料、代表者申告書等の説明が重要です。

 

6. カテゴリー3・4の「日本語要件」は一律の要件ではない

ここで誤解してはいけないのは、技術・人文知識・国際業務の全ての申請で、日本語能力試験N2以上が必須になったわけではないという点です。

令和8年4月15日以降に問題となるのは、主に言語能力を用いて対人業務等に従事する場合です。たとえば、翻訳・通訳、ホテルフロント、接客を伴う業務、外国語又は日本語を使って顧客対応を行う業務などでは、業務上使用する言語についてCEFR B2相当の能力があることを示す資料が必要となります。

日本語を業務上使用する場合、出入国在留管理庁は、JLPT N2以上、BJTビジネス日本語能力テスト400点以上、中長期在留者として20年以上本邦に在留していること、本邦の大学・高等専門学校・専修学校の専門課程又は専攻科を修了していること、我が国の義務教育を修了し高等学校を卒業していること等を、CEFR B2相当の日本語能力を有するものとみなす例として示しています。

一方で、技術職、研究開発、設計、システム開発、品質管理、海外取引のバックオフィスなど、日本語による対人業務が主たる活動ではない場合でも、申請内容によっては追加資料を求められることがあります。したがって、実務上は「日本語能力が必須かどうか」ではなく、「その仕事でどの言語を、どの程度、何のために使うのか」を整理することが重要です。

 

■ ホテルフロント・接客を主に担当

・資料提出の考え方:CEFR B2相当の言語能力資料が必要となる可能性が高い

・説明のポイント:日本語又は使用言語で、顧客対応、説明、調整、苦情対応を行う具体性を整理します。

 

■ 翻訳・通訳を担当

・資料提出の考え方:業務上使用する言語能力の立証が重要

・説明のポイント:翻訳・通訳の対象言語、成果物、使用場面、専門分野を明確にします。

 

■ 海外取引・マーケティングを担当

・資料提出の考え方:外国語能力だけでなく、専門的知識・学歴関連性も必要

・説明のポイント:貿易実務、契約、調査、販路開拓、分析業務との関連性を説明します。

 

■ 技術開発・品質管理を担当

・資料提出の考え方:日本語試験が一律必須ではないが、業務遂行能力の説明は必要

・説明のポイント:理系知識、専門用語理解、社内報告、マニュアル読解等の実務能力を説明します。

 

7. 「審査要領」的に重要な視点:主たる活動と業務の全体像

入管審査では、申請書に記載された職名だけでなく、在留期間中の活動を全体として見て、主たる活動が在留資格に該当するかが確認されます。公表資料でも、学術上の素養を背景とする一定水準以上の業務、又は日本国内の文化だけでは育てられないような思考・感受性に基づく一定水準以上の業務であることが重要とされています。

ここでいう「一定水準以上」とは、単に長く経験すれば誰でもできる作業という意味ではありません。大学、短期大学、高等専門学校、専修学校専門課程、又は職歴によって修得した体系的な知識を用いて、判断、分析、設計、改善、管理、調整、企画、開発を行う業務であることが必要です。

したがって、現場を含む仕事であっても、現場そのものが直ちに不可となるわけではありません。問題は、現場で何をしているのかです。単に手を動かす作業なのか、専門知識を使って工程を検証し、品質を判断し、改善を行い、社内の技術体系に反映する業務なのかによって、評価は大きく変わります。

 

■ 主たる活動

・弱い説明:現場作業もあります

・強い説明:業務割合を示し、専門業務が主で、一般作業は研修又は補助であることを示す

 

■ 専門性

・弱い説明:経験を積めばできます

・強い説明:大学等で学ぶ体系的知識を使い、分析・判断・設計・改善を行うと説明する

 

■ 関連性

・弱い説明:大学を卒業しています

・強い説明:専攻科目・研究内容・職歴と職務内容の結び付きを具体的に示す

 

■ 継続性

・弱い説明:採用したいです

・強い説明:会社の事業計画、取引実績、部署、業務量、将来の担当範囲を示す

 

■ 実体性

・弱い説明:専門職として雇います

・強い説明:1日の業務、成果物、使用資料、使用機器、上司・部署、社内フローを示す

 

8. 実務研修・OJTはどこまで認められるか

技人国で採用した外国人に、入社直後の研修として現場を経験してもらうことは実務上あり得ます。たとえば、営業企画職が店舗現場を理解するために短期間店舗研修を行う、品質管理職が製造工程を理解するためにラインを見学・補助する、技術職が製品知識を学ぶために現場研修を受けるといったケースです。

ただし、研修という名目で、在留期間の大半を一般作業に従事させることは認められません。研修であるならば、研修期間、研修内容、研修後の配属先、専門業務との関係、日本人社員にも同様の研修を行っているか、研修成果をどのように評価するかを明確にする必要があります。

特にカテゴリー3・4の会社では、会社規模が小さいため、職務の切り分けが曖昧になりがちです。だからこそ、採用時点で「入社後3か月は現場理解、その後は品質管理・工程改善・マニュアル化を主担当とする」など、時系列で説明できる資料が重要になります。

9. 特殊クリーニング会社の事例:外から見ると店舗作業、実態は技術職

当事務所が支援した事例では、東京都内の特殊クリーニング会社が、海外大学で理学系分野を学んだ外国人材を採用することになりました。最初にご相談を受けた段階で、業種名だけを見れば「クリーニング店の現場作業では技人国は難しい」と判断されても不思議ではない案件でした。

しかし、会社の実態を丁寧に確認すると、一般的な衣類の洗浄だけでなく、高級ブランド衣料、繊細な素材、特殊な汚れ、しみ抜き、色補正、薬剤管理、洗浄工程の検証など、非常に専門性の高い業務を行っていました。

現場では、新しい加工剤を使った生地テスト、従来品との仕上がり比較、pH試験紙による数値確認、静止乾燥機による熱収縮テスト、乾燥後の肌触り確認、素材別のリスク判断などが行われていました。これは、単に手順を覚えて作業するというよりも、素材、化学薬剤、温度、湿度、染色、繊維の性質を踏まえて判断する技術的業務でした。

申請では、この実態を雇用理由書、職務内容説明書、職場説明資料、業務内容表、洗いの手順書、現場写真、薬剤・機器管理資料等で整理し、申請人の自然科学分野の素養と職務内容との関連性を具体的に立証しました。その結果、在留資格「技術・人文知識・国際業務」として3年の許可を得ることができました。

 

■ 薬剤・溶剤の管理

・専門性の説明:繊維や汚れに応じた薬剤選択、濃度、反応、安全性を踏まえた管理

・提出資料の例:薬剤リスト、安全データシート、管理表、写真

 

■ 洗浄工程のテスト

・専門性の説明:生地、色、しみ、収縮、肌触りの変化を検証し、適切な工程を判断

・提出資料の例:テスト記録、工程表、比較写真、pH確認資料

 

■ 高級衣料・特殊品対応

・専門性の説明:素材特性、染色、装飾、皮革等の状態に応じたリスク判断

・提出資料の例:取扱品目一覧、事例写真、注意点メモ

 

■ 新規洗浄コースの開発補助

・専門性の説明:洗浄時間、乾燥条件、仕上がりを比較し、再現可能な工程を検討

・提出資料の例:開発メモ、マニュアル案、検証シート

 

■ 技術のマニュアル化

・専門性の説明:職人技を属人的経験で終わらせず、社内共有できる知識として整理

・提出資料の例:マニュアル、教育資料、業務フロー

 

10. 許可につながる書類作成の考え方

技術・人文知識・国際業務の申請では、単に「専門的な仕事です」と書くだけでは足りません。特に現場業務を含む会社では、通常の作業と専門的業務の境目を明確にすることが重要です。

今回のような案件では、会社の事業内容、申請人の学歴、職務内容、業務割合、専門性、研修の位置付け、報酬、会社の安定性、将来のキャリアステップを一体として説明する必要があります。

 

■ 会社の実態

・説明すべき内容:一般店舗ではなく、特殊な商品・素材・工程を扱っていることを示す

 

■ 職務内容

・説明すべき内容:一般作業ではなく、技術開発、工程管理、品質管理、マニュアル化などを具体化する

 

■ 学歴との関連性

・説明すべき内容:自然科学・人文科学の学習内容と、実際の業務との結び付きを説明する

 

■ 業務割合

・説明すべき内容:専門業務、補助業務、研修業務の割合を示し、主たる活動を明確にする

 

■ 資料の裏付け

・説明すべき内容:写真、マニュアル、作業工程表、1日の業務内容、薬剤・機器管理資料を添付する

 

■ 報酬・雇用条件

・説明すべき内容:日本人が従事する場合と同等額以上の報酬であることを示す

 

■ カテゴリー3又は4対応

・説明すべき内容:代表者申告書、会社資料、決算・納付資料、言語能力資料の要否を確認する

 

11. 不許可リスクが高い説明と、許可可能性を高める説明

同じ会社、同じ人材であっても、説明の仕方によって審査官の受け止め方は大きく変わります。もちろん、実態と異なる説明をしてはいけません。しかし、実態として専門的業務が存在するにもかかわらず、それを書類上で説明できていなければ、許可可能性を自ら下げてしまいます。

 

■ クリーニング全般を担当します

・許可可能性を高める説明:繊維・薬剤の特性を踏まえた洗浄工程の検証、しみ抜き・色補正の技術習得、薬剤管理、特殊品対応のマニュアル化を担当します

 

■ 人手が足りないため採用します

・許可可能性を高める説明:特殊クリーニング技術の継承と工程改善に必要な自然科学の素養を有する人材として採用します

 

■ 洗浄、アイロン、梱包を行います

・許可可能性を高める説明:素材別の洗浄条件の確認、熱収縮テスト、pH確認、仕上がり比較、品質管理を含む技術業務に従事します

 

■ 真面目で日本語ができます

・許可可能性を高める説明:理学系分野の学修歴があり、現場の技術資料を理解し、工程改善・マニュアル化に貢献できます

 

■ 店舗で接客もします

・許可可能性を高める説明:接客が主たる業務ではなく、専門業務に必要な顧客ヒアリング・品質説明として限定的に行います

 

12. 小規模企業・街の名店が申請するときの注意点

今回のような会社は、上場企業や大企業ではありません。いわゆる「街の名店」「地域の専門店」に近い会社です。小規模企業の申請では、会社の安定性、業務量、外国人材を継続して雇用する必要性を、より丁寧に説明することが大切です。

一方で、小規模企業だからこその強みもあります。代表者や職人が長年蓄積してきた技術、他店では対応できない特殊な依頼、顧客からの信頼、独自の工程管理、品質基準、リピート顧客、専門機器、独自マニュアルなどは、大企業にはない説得力を持つことがあります。

会社の規模だけで不利になるわけではありません。重要なのは、事業の実態、職務内容、採用理由を、審査官が読んで分かる資料として整えることです。特にカテゴリー3・4では、会社の実在性や継続性を補強する資料の質が大切になります。

13. 特定在留カードと新様式在留カード:企業が知っておきたい最新制度

令和8年6月14日から、特定在留カード等の制度が始まりました。特定在留カードとは、在留カードにマイナンバーカードとしての機能を付加するための措置が講じられたカードです。対象は、住民基本台帳に記録されている中長期在留者等であり、取得は義務ではありません。従来どおり、在留カードとマイナンバーカードを2枚持つことも可能です。

実務上、技人国で働く外国人本人にとっては、在留期間更新許可申請、在留資格変更許可申請、永住許可申請、在留カードの有効期間更新、再交付、住居地以外の記載事項変更届出等の場面で、特定在留カード交付申請を併せて行えることがあります。

ただし、特定在留カードは空港での新規上陸時には交付されません。また、通常の在留カードより交付までに10日ほど長くかかるとされており、当面の間、在留申請オンラインシステムを利用する場合には特定在留カード交付申請は受け付けられないとされています。企業が従業員の更新時期を管理する際には、この点も案内しておくと親切です。

また、特定在留カード等の導入と同時に、特定在留カードでない通常の在留カード等についても新様式に切り替わりました。現行様式の在留カード等は、新様式の交付開始後も有効であり、直ちに切り替える必要はありません。新様式では、1歳以上16歳未満の者についても顔写真が表示されることとなりました。家族滞在の子どもを含む世帯では、申請時・カード受領時の写真準備に注意が必要です。

 

■ 取得義務

・実務上のポイント:特定在留カードの取得は任意です。従来どおり在留カードとマイナンバーカードを別々に持つこともできます。

 

■ 対象者

・実務上のポイント:住民基本台帳に記録されている中長期在留者等が対象です。

 

■ 手続場所

・実務上のポイント:地方入管又は市区町村窓口で、対象手続に併せて申請できる場合があります。

 

■ オンライン申請

・実務上のポイント:当面の間、在留申請オンラインシステム利用時は特定在留カード交付申請を受け付けないとされています。

 

■ 交付時期

・実務上のポイント:通常の在留カードより、交付まで10日ほど長くかかるとされています。

 

■ 空港交付

・実務上のポイント:新規上陸時に空港で交付されるのは通常の在留カードです。

 

■ 新様式カード

・実務上のポイント:1歳以上16歳未満の者についても顔写真が表示されるため、子どもの申請でも写真準備に注意が必要です。

 

14. 企業が準備すべき資料

技術・人文知識・国際業務の申請では、最低限の必要書類だけでなく、会社の実態と職務内容を補強する資料が大切です。特に、業種名だけでは専門性が伝わりにくい場合は、追加資料の質が結果を左右します。

 

■ 雇用理由書

・役割:採用理由、会社の事業内容、申請人を必要とする理由を説明する中核資料

 

■ 職務内容説明書

・役割:担当業務、業務割合、専門性、一般作業との違いを明確にする資料

 

■ 職場写真・作業写真

・役割:薬剤、機械、テスト工程、特殊品対応など、現場の専門性を視覚的に示す資料

 

■ マニュアル・工程表

・役割:作業が単なる経験則ではなく、一定の知識と判断に基づくことを示す資料

 

■ 学歴・成績資料

・役割:専攻科目と職務内容の関連性を説明するために使用する資料

 

■ 雇用契約書・報酬資料

・役割:雇用条件、報酬額、職務内容の整合性を確認する資料

 

■ カテゴリー資料

・役割:法定調書合計表、決算書、事業計画書、給与支払関係資料、代表者申告書等

 

■ 言語能力資料

・役割:対人業務で言語能力を主に用いる場合のCEFR B2相当資料、JLPT、BJT、卒業証明等

 

15. 技人国で避けるべき5つの落とし穴

落とし穴1:職務内容が「作業名」だけで終わっている

「洗浄」「接客」「管理」「補助」などの作業名だけでは専門性は伝わりません。どのような判断、分析、設計、検証、改善を行うのかまで説明する必要があります。

落とし穴2:学歴との関連性が説明されていない

申請人が大学を卒業していても、その専攻と職務内容の関連性が不明確であれば審査上の不安要素になります。成績証明書や専攻科目の内容も踏まえ、どの知識がどの業務に活かされるのかを整理します。

落とし穴3:「人手不足だから採用したい」が前面に出ている

技術・人文知識・国際業務は、人手不足解消のための在留資格ではありません。採用理由は、専門的知識・技術を活かす業務であることを中心に説明する必要があります。

落とし穴4:研修と本配属の区別が曖昧である

研修として現場作業を行う場合でも、期間、目的、内容、研修後の専門業務への移行を明確にしなければ、一般作業に従事する予定と見られるおそれがあります。

落とし穴5:カテゴリー3・4の追加資料を軽視する

中小企業・新設会社では、会社の実態、代表者の関与、事業継続性、言語能力資料の要否などを丁寧に確認する必要があります。提出資料が揃っていない場合、審査の長期化や不許可リスクにつながります。

16. 在留期間3年の許可を目指すために

在留期間は、最終的には入管の個別判断です。そのため、「この資料を出せば必ず3年になる」といった保証はできません。

ただし、会社の事業が安定していること、雇用契約の内容が明確であること、職務内容と学歴の関連性が十分に説明されていること、報酬額が適正であること、申請人の在留状況に問題がないこと、カテゴリー資料や言語能力資料が整っていることは、長めの在留期間を得るうえで重要な要素になります。

今回の事例では、会社の特殊性、職務内容の専門性、申請人の自然科学分野の素養、提出資料の具体性を総合的に整理できたことが、3年許可につながったものと考えています。

17. よくある質問

Q1. 飲食店やクリーニング店では、技術・人文知識・国際業務は取れませんか?

業種名だけで一律に判断されるわけではありません。ただし、主たる業務が調理、接客、洗浄、梱包などの一般的な現場作業であれば難しくなります。専門的な知識を要する業務が主であり、学歴・職歴との関連性を説明できるかが重要です。

Q2. 大学で理系を専攻していれば、現場作業でも許可されますか?

理系専攻であることだけでは足りません。専攻内容と実際の職務内容に関連性があり、業務自体が一定水準以上の専門的能力を必要とするものでなければなりません。

Q3. 研修として現場作業を行うことはできますか?

入社当初の研修として現場理解が必要な場合はあります。ただし、研修後も一般作業が中心であれば問題になります。研修の位置付け、期間、将来の専門業務との関係を明確にする必要があります。

Q4. カテゴリー3・4の会社では、日本語能力試験N2が必須ですか?

全ての技人国申請でN2が必須になったわけではありません。主に言語能力を用いて対人業務等に従事する場合に、業務上使用する言語についてCEFR B2相当の能力を示す資料が問題になります。日本語を使用する場合、JLPT N2以上やBJT400点以上等が代表的な資料となります。

Q5. 特定在留カードは必ず取得しなければなりませんか?

取得は任意です。従来どおり、在留カードとマイナンバーカードを別々に持つこともできます。ただし、更新や変更の際に手続を一元化できるメリットがあります。

Q6. 新様式の在留カードになったら、現在のカードは使えなくなりますか?

現在の在留カード等は、新様式の交付開始後も有効です。直ちに切り替える必要はありません。

Q7. 雇用理由書では何を重視すべきですか?

会社の事業内容、申請人の学歴・職歴、職務内容、専門知識との関連性、採用の必要性、報酬額、提出資料との整合性を重視すべきです。抽象的な熱意ではなく、客観的資料に基づく説明が重要です。

Q8. 許可の可能性が低い案件でも相談できますか?

可能です。むしろ、難しい案件ほど早い段階でリスクを洗い出すことが重要です。申請すべきか、時期を待つべきか、職務内容や資料を見直すべきかを、制度に沿って検討します。

18. 行政書士鈴木茂事務所の支援方針

行政書士鈴木茂事務所では、外国人を雇用したい企業様からのご相談に対し、単に「できる」「できない」を表面的に判断するのではなく、会社の事業内容、職務内容、申請人の学歴・職歴、提出資料の整合性を丁寧に確認します。

特に、今回のように一見すると単純作業に見えるものの、実態として専門的な技術・知識を要する業務については、その専門性を入管審査官に伝わる形で整理することが重要です。

外国人材の採用は、会社の将来を左右する大切な経営判断です。技術・人文知識・国際業務での採用をご検討中の企業様、カテゴリー3・4の中小企業様、特殊な現場を含む業務で判断に迷われている企業様は、早い段階でご相談ください。

参照した公的資料

出入国在留管理庁「在留資格『技術・人文知識・国際業務』」

出入国在留管理庁「『技術・人文知識・国際業務』の在留資格の明確化等について」及び各別紙

出入国在留管理庁「翻訳・通訳業務等の言語能力を用いる対人業務に従事する場合の在留資格の明確化について」

法務省・日本法令外国語訳データベース「出入国管理及び難民認定法第7条第1項第2号の基準を定める省令」

出入国在留管理庁「特定在留カード等交付申請について」

出入国在留管理庁「令和7年末現在における在留外国人数について」

厚生労働省「『外国人雇用状況』の届出状況まとめ(令和7年10月末時点)」

 

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

お気軽にお問合せください

お電話でのお問合せ・相談予約

090-2659-5170

<受付時間>
平日9:00~20:00/土曜・日曜・祝日9:00~20:00

フォームは24時間受付中です。お気軽にご連絡ください。

新着情報・お知らせ

毎日更新中
ブログ記事
2026/07/20
「特集記事」を更新しました
2026/07/01
「報酬額一覧」を全面改訂いたしました

行政書士鈴木茂事務所

住所

〒156-0041
東京都世田谷区大原1-22-16

アクセス

下北沢駅東口から徒歩10分
笹塚駅改札口から徒歩10分

受付時間

平日9:00~20:00
土曜・日曜・祝日9:00~20:00

定休日

なし