日本人配偶者と離婚した後の永住申請――身分関係が変わった時に見るべき順序

日本人の配偶者(夫または妻)として「日本人の配偶者等」の在留資格で暮らしていた外国人が、離婚という大きな生活上の転機を迎えた後も日本に残り、将来的に「永住者」の資格を目指すケースは多くあります。

日本人の配偶者等に対する永住許可の在留年数の特例は、実体を伴う婚姻関係が継続していることを前提とします。離婚が成立した場合は、その特例を前提とした申請を継続できるかを見直す必要があります。また、「日本人の配偶者等」の在留資格で、正当な理由なく配偶者としての活動を一定期間行っていない場合は、在留資格取消しの対象となる可能性があります。離婚後の在留資格変更と永住申請への影響を早めに確認してください。

離婚後に永住を目指す場合は、まず離婚の届出と現在の在留資格を適切に整え、その後、在留年数、生計、納税・社会保険等の永住要件を確認します。

 

1. 第一ステップ:離婚後14日以内の「所属機関等の届出」と「在留資格変更」

離婚届が市区町村役所に受理されたら、まず最初に行わなければならない法的義務は、離婚した日から14日以内に入国管理局へ「配偶者に関する届出(離婚の届出)」を提出することです(入管法第19条の16第3号)。これを怠ると、その後のすべての在留審査において「義務を怠る素行の悪い外国人」とみなされ、永住の道は難しくなる可能性があります。

届出を終えたら、現在の「日本人の配偶者等」のビザの有効期限がどれだけ残っていようとも、速やかに別の在留資格(例:正社員として働くための「技術・人文知識・国際業務」や、自立して日本で暮らすための「定住者」)への変更申請を行います。この「離婚直後のビザ変更」を無事に満たし、日本での新しい生活の基盤(土台)を法的に確認することが、永住に向けた一般的な対応となります。

 

2. 第二ステップ:在留年数カウントの「リセット」と「スライド」のルール

離婚した後の永住申請において、特に多くの人が勘違いしやすいのが「在留年数の数え方」です。配偶者ビザの時代に日本に7年住んでいたから、あと3年で10年になる、と考えがちですが、ここには入管法上の慎重なルールがあります。

配偶者特例の消滅: 離婚したため、前述の「婚姻3年・在留1年」という特例は一切使えなくなります。

一般要件(10年ルール)への移行: 離婚後は、原則として「引き続き10年以上日本に在留し、そのうち就労資格(または居住資格)を持って5年以上勤務していること」という、一般の外国人と同じ慎重な基準が適用されます。

在留の継続性(リセットされるか): 幸いなことに、離婚してビザを「配偶者」から「就労ビザ」や「定住者ビザ」へ国内で途切れなく変更することができれば、過去の在留年数はリセットされず、そのまま通算してカウントされます。つまり、配偶者で7年、就労ビザに変えてから3年を適法に過ごせば、トータルで「引き続き10年在留、うち就労5年」の要件を満たし、永住申請の申請要件を満たす可能性があります。

 

3. 審査で確認されるポイント:離婚後の「生活の立て直しと自立性」の証明

「10年」の年数要件を満たして永住申請を行った際、審査では特に慎重にチェックするのは、配偶者という受入先を失ったあなたが、「日本社会において、一人の力で経済的・社会的に自立して生活できているか(入管法第22条の生計要件)」という点です。

具体的には、以下の要素が審査要領の基準に照らし合わせて厳密に査定されます。

雇用の安定性と職歴の一貫性: 離婚後に転職を繰り返していないか。現在の会社での勤続年数が長く、毎月安定した収入(年収300万円以上が目安)を自らの力で稼ぎ出しているか。

公的義務の単独履行: 配偶者の扶養から外れた後、自分名義で国民年金や厚生年金、国民健康保険、住民税を「1回の手続きの遅れも、1日の納期の遅れもなく」期日通りに納め続けているか。

住居の確保: 元配偶者の家を出た後、自分名義で賃貸借契約を締結し、健全な生活拠点を維持しているか。

 

よくある質問と実務回答

日本人の夫と5年間同居して結婚生活を送っていましたが、夫の浮気が原因で先月離婚しました。私は現在、会社員として働いています。「配偶者ビザで3年以上住んでいた」という過去の実績を使って、今すぐ永住申請をすることはできませんか?

なお、離婚が成立してしまった後では、過去の婚姻期間がどれだけ長くても配偶者特例を使った永住申請は原則として難しい場合があります。永住の配偶者特例は「今後も日本人の配偶者としての安定した家庭生活が、日本国内で継続していくこと」を前提にしているからです。あなたの場合は、まず現在の「日本人の配偶者等」のビザを、あなたが働いている会社の書類を使って「技術・人文知識・国際業務」などの就労ビザへ変更し、日本での在留期間が通算で10年(そのうち就労期間が5年)に達するのを待ってから、一般の要件で永住申請を行う必要があります。

離婚をした後、子供の親権を私が持ち、日本人の子供を育てているため「定住者(実子養育定住)」のビザに変わりました。定住者ビザの場合、何年日本に住めば永住申請ができますか?

離婚後に「日本人の実子を養育する定住者」となった場合、入管のガイドラインにより、永住申請に必要な在留年数が「定住者の資格を取得後、引き続き5年以上の在留」へと大幅に短縮される優遇措置(特例)を受けることができます。配偶者ビザの時代の10年ルールよりも早く申請の権利が戻ってきますので、子供を日本で大切に育てながら、5年間の適法な就労と納税の実績をしっかりと積み重ねていってください。

離婚手続きの話し合いが長引いており、別居を始めてからすでに7ヶ月が経ちますが、まだ離婚届は出していません。ビザの更新期限が近づいていますが、このまま「日本人の配偶者等」のビザの更新はできますか?

法律上、正当な理由(ドメスティック・バイオレンスからの避難や、離婚調停・裁判の手続き中であること)がない限り、配偶者としての実態を伴う活動を継続して6ヶ月以上行っていない場合は、ビザの更新は不許可になるか、在留資格取り消しの対象となります。もし離婚調停中なのであれば、裁判所から発行される「事件係属証明書」などを添付し、「婚姻関係は破綻しているが、法的な解決のために日本に滞在する必要がある」という正当な理由を入管へ示し、一時的な「特定活動」ビザなどへの変更手続きを行うのが適切な実務対応です。

 

行政書士鈴木茂事務所からのメッセージ

離婚という生活上の大きな痛みを抱えながら、見知らぬ土地である日本で「これから一人で生きていけるだろうか、ビザはどうなるのだろうか」と、深い孤独と不安に震えている外国人の方々の声を、私はこれまで数多くお聞きしてきました。

離婚等により現在の在留資格の前提が変わった場合は、速やかに届出と今後の在留資格を検討する必要があります。就労、収入、在留歴などによっては、別の在留資格への変更や、将来の永住申請を検討できる場合があります。当事務所では、現在の状況と必要な手続を整理し、申請方針の検討を支援します。

 

公的リファレンス・参照一次情報:

o 出入国在留管理庁「配偶者に対する届出(入管法第19条の16第3号)」

o 出入国在留管理庁「永住許可に関するガイドライン(日本への貢献による在留年数の特例規定)」

o 在留審査要領(日本人配偶者との離婚に伴う在留資格変更許可申請の審査基準通達)

 

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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