更新申請中に在留期限が過ぎた――特例期間と銀行・勤務先への説明

在留資格の更新申請(在留期間更新許可申請)や変更申請を在留期限の間際に行った場合、入国管理局の審査結果を待っている間に、在留カードの表面に記載されている「在留期間の満了日」を過ぎてしまうことがあります。

在留カードの期限が切れた状態で日本に滞在していると、「オーバーステイ(不法滞在)になってしまったのではないか」と強い不安に襲われる外国人の方は少なくありません。また、事情を知らない勤務先の総務担当者から「期限が切れているので出社を控えてください」と言われたり、銀行から「在留期限が経過したため口座を一時凍結(ロック)します」という通知が届き、パニックになってしまうケースが毎年のように発生しています。

この「審査待ちの期間」の法的な身分について、出入国管理及び難民認定法(以下、入管法)の正しい規定と、勤務先や銀行へどのように説明し対応すべきか、実務上の具体的な解決策を詳しく解説します。

 

1. 法律が保障する「特例期間」の仕組み

入管法第20条第6項(変更申請の場合は第21条第4項)には、在留資格の申請を行った者に対する「特例期間」という極めて重要な救済規定が明文化されています。

在留期間の満了日までに、適法に更新または変更の申請を行っていれば、たとえ審査中に満了日を過ぎたとしても、次のいずれか早い方の日までは、それまで持っていた在留資格と全く同じ身分のまま、日本に適法に在留し続けることができます。

入国管理局から、その申請に対する処分(許可または不許可)が下された日

在留期間の満了日から「2ヶ月」が経過する日

つまり、満了日を数日、あるいは1ヶ月過ぎていたとしても、それは不法滞在ではなく、法律によって完全に守られた「適法な在留」です。それまで就労ビザを持っていた方であれば、この特例期間中も全く同様にフルタイムで働き、給与を受け取る権利があります。

 

2. 勤務先(会社の人事・総務)への正しい説明方法

不法就労助長罪(入管法第73条の2)を恐れる企業の人事担当者は、在留カードの券面記載の期日だけで就労の可否を判断し、過剰にデリケートな対応をとることがあります。会社に不要な誤解を与えないためには、以下の2点を見せて「私は現在、特例期間中で適法に就労できる状態です」と論理的に説明してください。

在留カードの裏面: 窓口で申請した場合は、在留カードの裏面右下に「在留資格変更許可申請中」または「在留期間更新許可申請中」という入管の受付印(消印)が押されます。

申請受付票(インデックス): オンライン申請の場合は、受付印の代わりに「申請受付票」や「受付完了メール」の通知書が発行されます。

これらは、入管法に基づく特例期間がスタートしていることの公的な証明書です。出入国在留管理庁の公式サイトにも「特例期間中は従前の在留資格で就労が可能」である旨が明記されていますので、そのページを印刷して会社の担当者へ提示するのも非常に有効です。

 

3. 銀行口座の凍結(ロック)警告への実務対応

近年、マネーロンダリングやテロ資金供与対策の観点から、金融庁のガイドラインに基づき、各銀行は外国籍の口座開設者に対して定期的な在留期限の確認を厳格に行っています。カードの満了日が近づくと、「期限までに新しい在留カードを提示しなければ口座を制限する」という督促状が届きます。

もし、特例期間中に口座がロックされそうになったり、実際に止められてしまった場合は、ただちに銀行の窓口(または郵送・Webの専用フォーム)へ連絡し、上記の「在留カード裏面の写し」または「オンライン申請の受付票」を提示してください。

多くの主要銀行では、特例期間のルールをマニュアルに組み込んでおり、申請中の証拠を提出することで、一時的に口座のロックを解除、あるいは猶予期間を2ヶ月間延長する措置をとってくれます。

 

よくある質問と実務回答

特例期間の「2ヶ月」が過ぎようとしているのに、入管からまだ結果のハガキ(通知)が届きません。このまま2ヶ月を過ぎたら不法滞在になりますか?

大変緊迫した状況ですが、実務上、入管の審査が極めて混雑している場合、特例期間の2ヶ月の満了間近になっても結果が出ないケースが稀にあります。法律の文面通りであれば2ヶ月が絶対的な期限ですが、入管の内部実務(審査要領)では、このような場合は期限が切れる前に申請先の入管へ問い合わせるか出向くことで、臨時の「特定活動(審査待ち)」のビザへ一時的に切り替えるなど、オーバーステイにさせないための救済措置がとられます。黙って2ヶ月を過ぎるのを待つのではなく、必ず満了の1週間前には専門家や入管へ相談してください。

特例期間の2ヶ月の間に、急な用事で海外へ一時出国(帰国)することはできますか?

実務上、特例期間中の出国は「絶対に避けるべき」です。みなし再入国許可の手続きを行えば物理的に出国することは可能ですが、あなたが海外に滞在している間に、入管から「許可が出たので在留カードを取りに来てください」という通知や、逆に「追加の書類を出しなさい」という通知が日本の住所に届いた場合、期限内に対応できずに申請が却下・不許可となってしまうリスクが非常に高くなります。そうなると、海外から日本へ戻ってくることができなくなるという最悪の事態を招きます。

オンラインで申請したため、在留カードの裏面に「申請中」のハンコが押されていません。会社や役所に説明しても信じてもらえない時はどうすればいいですか?

オンライン申請が主流となった現在、ハンコがないトラブルは非常に増えています。その場合は、入庁ウェブサイトのマイページからダウンロードできる「申請受付番号が記載されたPDFデータ(受付完了通知)」を印刷し、それと併せて、出入国在留管理庁が一般向けに公表している「オンライン申請における特例期間の取扱いに関する案内リーフレット」をセットにして提示してください。国が発行している公式の案内を見せることで、大半の役所や企業のコンプライアンス部門は納得して手続きを進めてくれます。

 

行政書士鈴木茂事務所からのメッセージ

在留カードの期限が切れるというのは、日本で暮らす外国人の方にとって、毎日の生活の根幹が揺らぐほどの大きなストレスです。周囲の無理解によって、まるで自分が悪いことをしたかのように扱われ、傷ついている方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、法律はあなたを裏切りません。正しい知識さえあれば、会社の手続きも銀行の口座も、堂々と守ることができます。当事務所では、特例期間中の就労トラブルや、会社への説明方法に関する法的なアドバイス、入管への審査状況の確認など、あなたが日本での平穏な日常を維持できるよう、専門性の高いサポートを惜しみません。少しでも不安を感じたら、一人で抱え込まずに、いつでも私にご相談ください。あなたの安心を第一に考え、共に行動いたします。

 

公的リファレンス・参照一次情報:

o 出入国在留管理庁「在留資格変更許可申請及び在留期間更新許可申請の特例(入管法第20条第6項等)」

o 金融庁「外国籍のお客さまへ:在留期間等の確認に関するお願い(ガイドライン)」

o 全国銀行協会「在留期限が経過した場合の預金口座の取扱いについて」

 

【この記事の執筆・監修者】

申請取次行政書士 鈴木 茂(すずき しげる) 東京都世田谷区大原(京王線・井の頭線沿線エリア)を拠点とする、在留資格・ビザ申請専門の行政書士。 永住許可、国際結婚、高度専門職などの複雑な申請において、入管の審査ポイント(事実の証明と資料の整合性)を的確に押さえたサポートを得意とする。忙しい外国人ビジネスパーソンやカップルに向けた、フットワークの軽い伴走型の支援が強み。

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